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第363話
大広間に入るとたくさんのテーブルとずらりと並んだ料理の数々。
オーソドックスな料理から沖縄の郷土料理まで様々だ。
空いている席を見つけて場所を取り、3人で料理を取りに行く。
「美味そう〜!」
「綾人、これ好きだろ?」
「あ、それ好き。俺のも入れて。」
「ちょっと!先輩はこれ食べるでしょ!」
「あ、食べる。」
「好き?」
「……?好きだけど。」
恋人である城崎、親友である涼真。
二人とも俺の味の好みを知っているから、あれもこれもと俺の皿に盛っていく。
特に城崎から盛られる量がすごい。
「も、もういい…。」
「これも好きでしょ?」
「好きだけど…。」
「これは?」
「じゃあちょっとだけ…。」
「好き?」
「……??好きだけど。」
「♪」
プレートの上にこんもりと盛り付けられた数々の料理。
小学生がバイキングにいくとよくある、最初に乗せすぎて後から全然食べれないパターンになりそう。
城崎は「あっちにデザートありますよ!」なんて言いながら、嬉しそうな顔で先に行ってしまった。
「なんなんだ……?」
城崎のプレートは大して盛られてないのに…。
俺のばっかり盛るし、なんかいつもの城崎らしくないと言うか…。
「ふむふむ。これは嫉妬ですねぇ。」
「確実にそうだと思います、隊長。」
ふと後ろから見知った声が聞こえてきて振り返る。
ひそひそと俺に聞こえるように、俺をジト目で見ながら話す二人。
涼真と千紗だ。
「綾人が軽率に俺に『好き』なんて言ってから、彼は小学生のように『好き』を求め始めましたよ。」
「分かりやすいですねぇ。いや、実に萌えですなぁ!」
「萌えとは何でござろうか、隊長?」
「ちっちっち…。柳津くんはまだBLを分かっていないようだね…。萌えとは……、正義なのである!!」
「なんなんだよ、その喋り方!しかも俺に丸聞こえだから!!」
聞いてて恥ずかしくなってきて、思わずつっこむ。
何なの、この二人…!本当助けて!!
「てか、なに?つまり城崎が嫉妬してたって言いたいのか?」
「まさか気づいてないの?」
「??」
「あんな恋する小学生みたいに分かりやすいアピールに気づかないなんて……。あれに気づいて甘やかしちゃうのが理想の年上受けなのにぃいい。」
「俺が悪いの…?」
千紗が膝から崩れ落ちる。
そんなこと言われても…なぁ?
「なにちんたらしてんの!とにかく城崎くんのとこ行きなさい!」
「え、あ、うん。」
「料理に対してじゃなくて、ちゃんと好きって言ってよ?!」
「はい……。」
なぜか説教を喰らい、城崎のいるデザートコーナーへ足を運んだ。
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