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第365話
ルームキーでロックを解除し、中へ入る。
目の前に部屋が広がっていたはずなのに、突然ぐるんっと反転した俺の視界には城崎と天井だけが映っていた。
「な………、んっ!」
「先輩っ、先輩、好き…っ」
「ンッ…ぅ、んっんん〜!!」
息継 ぎする間もなく、唇をこじ開けられて熱い舌が入ってくる。
口内を蹂躙 する舌は、俺が悦 ぶところを的確に狙ってきた。
「んふ…っ、ん、ぁ…♡」
「先輩、可愛い……、んっ」
「……ぁっ、ん、ンンッ…♡」
思わず蕩 けた声が漏れて、快楽に溺れそうになる。
抵抗をやめると、頭上で一纏 めに押さえつけられていた手の拘束は解け、指を絡めて両手を繋がれる。
たっぷりと俺を味わい尽くしたのか、城崎の唇が離れる。
俺が唐揚げ食ったから、城崎の唇も艶々と光っていて急に恥ずかしくなって目を逸らす。
「忘れ物は……?」
「嘘です。先輩と二人きりになりたかっただけ。それくらい分かってよ…。」
「だって今、社員旅行中だし…。」
「俺だって我慢しようと頑張ってますけど…、先輩が好きなんて言ってくるから……!」
城崎はゆっくり俺を抱きしめ、ぎゅぅっと力を込めた。
さっきあれだけシたから、もう満たされたと思ってたんだけどなぁ。
もう社員旅行に気持ちが切り替わっていたから、いつもなら気づけるような城崎からの甘えサインも気づけていなかったらしい。
「ごめん、城崎。」
「何がですか…。」
「気づいてやれなくて。さっき料理取りに行ってた時、嫉妬してたって本当?」
「……………。」
「すげぇ無意識だったっていうか、涼真じゃなくて料理に対して好きって言っただけだし。俺が恋愛的な意味で好きなのは城崎だけだから。な?」
「………すみません、ガキみたいな嫉妬しちゃって。」
俺を力いっぱい抱きしめる城崎がなんだか小さな子どものように見えて、思わず頭を撫でる。
可愛い……。
「あのね、先輩…。」
「ん?」
「大浴場、24時間空いてるそうです。」
「うん……?」
「だから、深夜の誰もいなさそうな時間に、二人で行きませんか…?」
俺の反応を確認するように、しおらしく誘ってくる。
可愛い。
……じゃなくて。
「いいよ。俺も入りたいし。」
「やった!」
「てか、いいの?城崎がダメって言ったんじゃん。」
「さっき24時間開いてるって貼り紙見たんです。さすがにみんな疲れて深夜は来ないでしょ?先輩と一緒にゆっくりしたいなぁって。」
「うん。」
「じゃあ、決まりですね。」
城崎は嬉しそうににっこりと笑った。
その笑顔が可愛くてたまらなくて、俺は城崎を引き寄せてまた唇を重ねる。
「ん…っ、先輩…?」
「戻ろっか。飯、冷める。」
「はい……。」
最後にもう一度触れるだけのキスをして、部屋を出る。
誰もいないことを確認して、エレベーターで下に降りる間、隠れるように手を繋いだ。
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