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第366話
大広間へ戻ってくると、何故か俺たちのテーブルに千紗もいた。
一応4人テーブルだったから、千紗がいても人数的には何も問題ないが…。
「おかえり〜。」
「遅かったな。忘れ物見つかった?」
「はい♪」
城崎の上機嫌。
明らかに上機嫌。
見るからに上機嫌。
「城崎くん、なんだか嬉しそうね?」
「そうですか?」
「うん♡それに何も食べてないはずなのに、唇が油っこいもんね?♡」
「「ブフッ…!!!」」
咽せたのは俺と涼真だ。
だから嫌だったんだよ!!席に千紗がいるの!!
「綾人の馬鹿!なんで隠してこないんだよ?!気づくだろ、普通!!」
「もー!忘れてたんだよ!!てか、そっちこそ、なんで千紗がこのテーブルにいるんだよ?!」
「おまえらが遅いから来たんだろうが!てか俺は寂しかったし?!千紗ちゃんが来て、ぼっち回避できて助かったし?!」
「悪かった!悪かったけどさ!!じゃあ俺たち何分離席してたよ?!」
「20分は経つね!!」
「え、マジ?」
涼真に言われて腕時計を見ると、たしかに結構時間が経っているような……。
うわ、マジか。
俺と城崎、移動時間とか喋ってた時間を抜いても10分くらいキスしてたってこと?
「お二人さん、何こそこそ話してるの?」
「え、いや…、あ、その……」
「やだぁ!綾人、顔赤〜い!なになに?混ぜて〜?」
「来んな!ばか!!」
勘も鋭く、元カノだからか図々しい。
おまけに腐女子で俺と城崎のあれこれ気になる彼女が、こういうとき一番会いたくない人物だ。
「キス、どんなだった…?」
「……っ!!」
「城崎くん、キス上手そうだもんね?綾人、蕩けちゃった…?」
「……うるさいっ!」
もはや元カノから弱みを握られて虐 められているようにしか見えない構図に、他の社員も興味津々に俺たちを見ていた。
会話の内容は聞かれていないはずだが、恥ずかしすぎて顔が上げられない。
「ちょっと。伊藤さん、俺の先輩を虐めるのもほどほどにしてください。」
「虐めるなんて失礼ね〜?」
「また後日、いくつか情報あげますから。」
「えっ♡本当っ?じゃあやめる〜!」
ひょいっと俺から離れ、千紗はご機嫌に自分のテーブルへ帰って行った。
なんだか嵐のようだったな…。
「先輩、食べましょう?」
「おう……。」
やっと落ち着いて食事できると席についたのはいいが、なかなかどうして、もうラストオーダー時刻が近くてもう一度料理を取りに行くために、掻き込むように平らげたのだった。
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