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第370話
風呂から上がり、脱衣所で服を着る。
時刻は3:30。
1時間ほど入っていたということか、全身温もった気がする。
城崎にドライヤーまでしてもらい、テスターで置いてあった高そうな化粧水と乳液をビシャビシャ塗られ、顔がツヤツヤになった。
二人で暖簾 をくぐると、大浴場の出入り口の外にちゅんちゅんが立っていた。
「「あ。」」
「望月さんっ、城崎さんっ!さっきは本当にすみませんでした!!」
90度を超えるくらい深いお辞儀をし、俺たちに謝罪する。
つってもなぁ…。
別にちゅんちゅんが悪いわけじゃないし…。
「顔上げて?ちゅんちゅんは止めてくれようとしたじゃん。」
「……ッス。」
「俺、何もされてないよ。大丈夫。」
笑顔を見せると、ちゅんちゅんは少しばかり安心したような表情を見せた。
「俺、他部署の同期に誘われて、向こうの部屋で一緒に飲んでたんです。そしたらあいつら、いきなり風呂行こうぜーとか言い出して、ノリで…」
「いや、俺らもこの時間なら大丈夫だろとか、保証もないのに勝手に入ってただけだし。な、城崎?」
「………まぁ。」
一年目あるある。
同期と一緒になるとはしゃいじゃうよなぁ。
昔のことを思い出し、うんうんと首を振っていると、ちゅんちゅんは少し上目遣いにボソボソ俺に尋ねた。
「一つ気になる……。いや、二つか三つばかり気になるんですけどね…。」
「ん?」
「あの首から鎖骨とか頸までびっしりだったキスマーク、どこまで続いてるんすか…?」
「え。」
「城崎さんが付けたんすよね?痛くないんですか?あっ、あとなんかすっげぇ望月さんがいやらしく見えたっつーか!それってやっぱ城崎さんのおかげなん…、痛ぇ!!」
どんどん声のトーンが上がって食い気味に俺に詰め寄るちゅんちゅんを、城崎がグーで殴った。
痛そう…。
ちゅんちゅんは涙目で後頭部を押さえている。
「先輩のこと変な目で見んな。」
「………だって」
「あ"?」
「すみませんでした。」
城崎の威嚇にちゅんちゅんは押し黙る。
もし仮に俺に恋愛感情のないちゅんちゅんから見て俺がエロく見えたんだとしたら、それはキスマークを付けたりした城崎のせいだと思うんだけど…。
口答えすら許されない二人の状況に思わず笑いそうになる。
「望月さんのこと聞いたら、城崎さんの地雷踏みそう…。」
「これ以上怒らせたくなかったら、聞かないほうがいいかも?」
「ッス…。じゃあ、じゃあ、城崎さんのことは聞いてもいいすか??」
「何?」
「いや、あの、ちんこデカすぎません??あれ、望月さんに入るんす……ってぇ!!!」
城崎のゲンコツが思いっきりちゅんちゅんの後頭部に落ちた。
さっきのより確実に重い一撃。
こいつ、馬鹿だ……。
「これ以上怒らせたくないんじゃなかったっけ?」
「スミマセンデシタ…。」
「先輩の裸、次想像したらこんなんじゃ済まねーからな?」
「ハイ…。以後気をつけマス……。」
涙を流しながらカタコトになるちゅんちゅん。
忠告したし、これはちゅんちゅんが悪い気がする。
城崎にガミガミ説教を受けたちゅんちゅんは、最後にまた謝って部屋に戻って行った。
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