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第374話
結局俺が急かして、搭乗1時間半前には空港に到着した。
国際通りでたくさん見たけど、暇を持て余してお土産を見つめる。
「先輩、まだ買うの?社員旅行だから仕事先には必要ないし、誰の分ですか?」
「いや、うーん…。自分用にお菓子と、いいのあれば実家に郵送しようかなって。」
「あー、実家かぁ…。俺はいいかな。先輩が食べたいのあれば買ってあげますよ。」
「いいよ。自分で買う。」
城崎は自分の分は買わないのに、俺の買い物に付き合ってくれた。
搭乗準備を済ませ、みんなが揃うのを待つ。
14:40には社員全てが揃い、搭乗口へ向かった。
座席は往復同じ席だから、城崎とは離れる。
そういえば、行きはすげぇごねてたな。
飛行機降りた瞬間、俺のところに走ってきたっけ。
搭乗口を通り、城崎に手を振る。
「じゃあな、城崎。また後で。」
「ふふっ。見てください、先輩♡」
城崎は「じゃーん!」と俺にチケットを見せる。
座席は13A。
俺のは13B………。
「え。なんで?」
「交換してもらいました!」
「どういうこと?だって俺の隣、面識ない社員だったぞ…?それに窓際だし。」
「行きの便でトイレ行くふりして、先輩の隣の席の人の顔確認しておいたんです。飛行機降りた後、先輩と合流する前に声かけて、俺も窓際だから、交換は結構あっさりと。」
城崎はニコニコと俺に微笑みかける。
こういうとこは抜かりないな、本当に。
おかげで家に着くまで一緒にいれるんだけど…、なんて。
照れ臭くて少しそっけない態度を取りながら、飛行機に乗り、席に向かう。
「先輩、奥座ってください。」
「え、いいの?窓際なのに。」
「先輩の隣に他の人座るの嫌だから。」
「あ……、そう。」
なんでこいつはこういうことさらっと言うかな?!
大丈夫かな?俺、顔赤くない?
ぺたぺた自分の頬を触って、熱くないか確認する。
無理矢理席に座らされ、間も無く飛行機が出発した。
「すみません。コーヒー二つ、ホットで。砂糖とミルク多めにもらえますか?あと、ブランケットも2枚いただけますか?」
「かしこまりました。」
城崎がCAに珈琲とブランケットを頼む。
おそらく、というかほぼ確実に俺の分も一緒に頼んでくれたんだと思うけど。
その場で珈琲を淹れてもらい、城崎が砂糖とミルクをたっぷり使って俺好みにしてくれた。
「どうぞ。」
「ありがとう。………美味しい。」
「温まりますね。」
ふぅふぅと冷ましながら少しずつ飲む。
ブランケットを足元にかけてくれて、そのまま太腿に手を置かれて驚いて横を見る。
「城崎…っ?」
「ブランケットの下だからバレないでしょ?」
「あ…、えっと、でも……ほら……」
「じゃあ手繋ご?」
太腿を触られるとなんだかムズムズしてしまって困っていると、城崎は察してくれたようで太腿を触るのをやめて手を握った。
これなら…いいかも…?
バレないかなってドキドキしていたら、行きとは違ってフライト時間はあっという間に感じたのだった。
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