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第376話
「………………」
「先輩?おはようございます♡」
「……………っ」
「まさか……、声出ないんですか?」
翌朝、声が出なかった。
「おはよう」が言えなくて焦る。
今日、普通に出勤なんだけどな…。
いや、出るには出るのだが、掠 れすぎて聞き取れないというのが正しい。
「ごめんなさいっ!!俺のせいですよね?!俺が無茶させすぎたからだ…。本当ごめんなさい!!先輩、休む?あー、でも心配だしっ。俺も休む?」
「…………っ」
「先輩、無茶して喋らないで?本当ごめんなさい。だって、先輩の声可愛すぎたから…。あー、もう……。こんなのただの言い訳だ。ごめんなさい。先輩、ごめんね?喉痛い?大丈夫?」
城崎は俺に何度も謝って、心配して会社に休みの連絡を入れようとしてくれてたけど、それも断った。
出社し、部長に自分で説明する。
理由は分からないと濁しておいたけど…。
喘ぎすぎて声が出なくなったなんて、死んでも言えない。
今日は事務仕事だけでいいとのことだ。
「綾人、大丈夫?」
「…………」
涼真が苦笑しながら声をかけてきた。
蚊の鳴くような声しか出ないので、ほぼ口パクでの会話。
やべぇ……、恥ずかしい……。
他の人からも、いくつか喉飴もらったり、わざわざ喉スプレーを買ってきてくれたり。
愛想笑いしていると、その光景を見て涼真が俺の肩を叩く。
「いろいろ聞きたいことあるし、昼会議室で食わねぇ?どーせさきちゃんが弁当作ってるだろ?」
頷くと「やっぱりな。」と笑われた。
そう。同棲してから俺は毎日、城崎の手作り弁当を持ってきている。
みんな彼女の手作り弁当、と言ってるけど、まぁ間違いではない。
涼真と約束していると、ちゅんちゅんが俺たちに熱い視線を送ってきていた。
「どーした?」
「お、俺も…、お昼混ぜてもらってもいいっすか…?」
「お、いいよ。綾人もいいよな?」
「………」
頷くと、ちゅんちゅんは「やったー!」と拳を掲げて喜んでいた。
城崎は………、電話対応中。
俺が出れない分、全部自分が出ると言い張って、今日はいつも以上に電話対応で忙しそうだ。
「城崎さんも来ますかね?」
「途中から来るんじゃね?」
「…………」
「あはは!そうだな!」
絶対来る、と口パクで言うと、涼真は笑っていた。
パソコンの見過ぎで目がしょぼしょぼしてきた頃、やっと昼休憩の時間になった。
「てか、ちゅんちゅん呼んじゃったから、おまえら2人の話できないな。」
「…………」
そういえば涼真には、ちゅんちゅんにもカミングアウトしたってこと言ってなかったっけ?
いろいろ聞きたいことあるって言った割に、ちゅんちゅんがくることOKしてたから知ってるもんだと思ってた。
まぁ、後で言えばいいか。
城崎は……、また電話中。
電話中の城崎のデスクに『会議室Cで昼食べてくる。』と書き置きし、アイコンタクトでOKの返事がくる。
俺と涼真とちゅんちゅんは電話中の城崎を置いて、先に会議室へ移動した。
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