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第377話
「声出ないのって、昨日城崎さんとなんかあったんすか?!」
会議室に入り席に着くとほぼ同時に、ちゅんちゅんが大きい声で俺に聞いた。
涼真は「なんで知ってるの?」と驚いた顔をしていて、ちゅんちゅんはワクワクと俺の返事を待っている。
「ぉ… ぇた」
「え、ちゅんちゅんにも教えたの?大丈夫か?」
「たぶん…」
涼真にだけ聞こえるように伝えると心配された。
わかるわかる。
ちゅんちゅんって、悪気なくポロッと口滑らせそうだもんな。
「ちょっと!城崎さんと柳津さん、なにひそひそ話してるんですか!」
「あー、ごめんごめん。ちゅんちゅんが知ってるって、俺知らなかったんだよ。」
「なるほどです!いやぁ、びっくりしましたよね。まさか目の前でキスされるなんて思いませんでした!」
「えっ、ちゅんちゅんも?」
「柳津さんもなんですか?!」
そういえばそうだった……。
涼真と千紗にカミングアウトしたときは、城崎が二人の前で俺にキスしたんだっけ。
俺たち普通にカミングアウトできないのかよ…。
「で?で?望月さん、城崎さんに何されちゃったんですか?」
「……………」
「一晩中ヤリまくったとかですか?旅行終わりに城崎さんもすごいっすね〜。それに付き合う望月さんもなかなかの…痛ぁっ!!!」
事実だが人に言われると恥ずかしくて、見せる顔がなくて俯いてると、ちゅんちゅんの叫びが聞こえた。
「俺の先輩にセクハラしないでくれる?」
「城崎さん…っ!」
「先輩、待たせてごめんね。」
電話を終えた城崎が会議室に入ってくるなり、ちゅんちゅんを引っ叩いて俺を抱きしめた。
額や頬に啄 むようなキスをして、俺の隣に腰を下ろす。
「喉、大丈夫ですか?」
「ぅん…」
「まだ結構掠れてますね…。ホットレモネード淹れてきたんですけど、よかったら。」
「ぁりがと」
城崎に渡されたマグカップは温かくて、フーフー息を吹いて冷ましながら飲む。
追加で蜂蜜を加えたのか、甘くて美味しい。
俺がホットレモネードを飲んでいるのを見て、涼真とちゅんちゅんは机に肘をついた。
「二人の世界入ったなぁ。」
「柳津さん、見ました?またチュッてしてましたよ。」
「みたみた。俺らが知ってるからって好き放題してるよなぁ、本当。」
飲みづらい…。
ちゅんちゅんはともかく、涼真は加担するなよ…。
ジト目で見ると、涼真は「悪い悪い」と笑って謝った。
「で、束縛系彼氏の城崎クンは、どうして綾人の声がこんなになるまでやっちゃったの?」
「分かってると思いますけど、同意の上ですよ?沖縄では柳津さんに邪魔されましたしね。」
「はぁ〜?あれでもかなり譲歩しただろ。」
「えっ…。沖縄でもヤッてたんすか?!」
わー…。ちゅんちゅんがいるから話脱線してる。
というか、そもそも城崎が話を脱線させたよな。
こいつら構ってたら昼飯食べる時間なくなりそう。
そう思って、弁当の蓋を開ける。
お、美味そう。
今日はオムライス弁当だ。
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