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第378話
「うわ〜。相変わらず城崎料理上手いな。」
涼真が俺の弁当の中身を見て、感心したように声を上げた。
それを聞いて、ちゅんちゅんが立ち上がって俺の弁当を覗き見る。
「ええっ!これ城崎さんが作ってるんすか?!食べてみたい!!」
「は?ダメに決まってんだろ。これは先輩の分だから。」
「今度作ってください!」
「嫌。」
ちゅんちゅんがいるとこんなにも賑やかになるものか。
めげないちゅんちゅんと、それを面倒臭そうにあしらう城崎を見て、思わず笑ってしまう。
てか、オムライスにかかっているケチャップ、ハートマークって…。
こんなの見られたら恥ずかしすぎる。
「新婚かよ(笑)」
「……………」
涼真につっこまれて、顔が赤くなる。
いや、本当……。
新婚とかバカップルしかしてるの見たことねーよ。
と思いつつも、ハートを崩さないようにスプーンで丁寧に掬って口に運ぶ。
「先輩、美味しい?」
「美味い。なんか前より美味しい気がする。隠し味になんか入れた?」
オムライスは前に一度作ってくれたことがあるけど、その時より腕を上げたのか、それとも何か隠し味を入れたのか。
気になって城崎を見上げると、城崎はニコニコ笑って手でハートを作る。
「よかったぁ〜。隠し味はね、先輩への愛です♡」
「「「………………」」」
まさかの返答に場が静まった。
あのちゅんちゅんでさえ黙らせた。
「冗談ですよ……。隠し味というか、有名ですけどウスターソースは加えましたよ。やっぱり変わります?」
「ん。コクが違う気がする。」
「まぁ美味しいならよかったです♡」
城崎が横にぴったりとくっついて、食べにくいなぁと思いながらも完食する。
涼真やちゅんちゅんは既に食べ終わっていて、ちゅんちゅんは俺たちの方をソワソワした様子でじっと見つめていた。
そろそろ本題に入りたいのだろう。
「望月さんと城崎さんはいつから…その、お付き合いしてるんですか?」
まずは軽いジャブ。
いきなりぶっ込んだところくるかと思ったけど、城崎に何度か拳骨 を喰らい学んだようだ。
「ちゅんちゅんが入社した少し後だよ。」
「お二人とも元々ゲイ?って言うんですかね…、その、恋愛対象男なんすか?」
「俺の片想いが約1年。先輩はもともと恋愛対象女だし、俺が引き摺 り込んだだけ。」
「そうっすよね!望月さんは伊藤さんとお付き合いされてたって有名っすもんね!」
「………」
現恋人の前で元カノの話はNGだろうが、バカ…。
まぁ城崎もそれは知ってるし、過去は消すことはできないから仕方ないんだけど……。
相変わらずデリカシーがない男だ。
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