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第380話
会議室に二人きりになって、心拍数が上がる。
「やっと二人きりですね…♡」
「おう…。」
「先輩、心臓ばくばくいってる。」
「言うなよ…。」
「可愛い。」
恥ずかしさで顔を上げられなくて、城崎の腕の中から抜け出せない。
キュッとシャツを握ると、城崎がくすくす笑う。
「せーんぱい」
「………」
「俺、先輩の掠れた声も好きだなぁ。」
「あっそ…。」
「顔上げて?」
「……やだ。」
「お願い。いいもの見せてあげるから。」
渋々城崎の胸板から顔を離して、少しだけ上を見上げる。
すると、端正な顔立ちが目の前にあった。
そのまま俺の唇と重なる。
睫毛、長いな…。
「いいもの見れた?」
「何のこと?」
「俺のキス顔。先輩結構目瞑ってること多いから。レアでしょ?」
「ば、バカ…!!」
何でそんな平然と恥ずかしいこと言ってくんの!?
たしかにそんな見ないけどさ?!見ないけど!!
自分のキス顔を"いいもの"って言えるその自信もすげぇよ。
いや、キス顔すげぇ格好良かったけど…!
「もうちょっとだけ、キスしていいですか?」
「だ、ダメ…。もう昼休み終わるから…っ!」
「あと5分。ダメ?」
「人来ちゃうから…。ダメ……。」
「じゃああと一回だけ。いいでしょ?」
「ん……、んぅ…」
机に押し倒されて、城崎の唇と俺の唇が重なる。
舌が絡まって、熱くて、ぞわぞわして…。
もう昼休憩が終わる時間だし、いつ人入ってくるか分かんないのに……。
「ん…ふ……、ぁ……」
「ふっ…、可愛すぎ…。」
「んぅ……」
ぺろりと俺の唇を舐めて、城崎の顔が離れる。
やば……、力入らない…。
「声もでなくて腰も立たないなんて、お仕事どうするんですか?」
「誰のせいだよ…っ」
「先輩のこと大好きで大好きで制御効かない俺のせいですねぇ。」
「バカ……。」
「また遅刻して部長に怒られちゃいますね。まぁ、いっか。俺たち営業成績良いですもん。」
城崎は反省した様子を全く見せず、のんきに俺の隣に座り込んだ。
午後からこの会議室の使用予定がなかったのが不幸中の幸いだ。
今は俺もこの状態だから言い返せないけど、帰ったら絶対説教してやる…。
なんて意気込みも虚しく、家に帰ってから城崎に盛大に甘やかされて眠ってしまったのだった。
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