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第383話

頭に大きなたんこぶを作った城崎の弟が床に正座させられ、俺と城崎は見下すようにソファに座っている。 可哀想…かも……。 隣に座る城崎は怒ってるから、そんなこと言い出せる状況じゃないけど……。 「そもそもおまえ、何でこの家知ってんだよ?」 「麗子さんに聞いた〜。」 「はぁ…。そういうことか。」 城崎は頭抱えて、また溜息を吐いた。 麗子ママにも面識あるとか、城崎の周りについて詳しすぎるだろ。 結構世話のかかる子なのかな? 「改めまして、先輩。こいつは弟の葉月(はづき)です。」 「葉月くん…。」 「城崎(しろさき)葉月(はづき)、17歳。ぴちぴちの高校2年生です♡」 「キモい。」「可愛い。」 「は?」「え?」 葉月くんが若者特権のかわい子ぶりっ子で自己紹介するのを見て、思わず口に手を当てて感涙(かんるい)する。 城崎は冷めた目で葉月くんを見てて、「可愛い」と思わずこぼした俺を引いた目で見る。 だって可愛いじゃん!! 城崎が高校生の時もこんな可愛かったのかなぁ…。 「先輩……、さっきあんなことされたばっかりですよね…?」 「そ、そうだけど…。」 「なーにが可愛いですか。こんな奴のどこが可愛いんですか?!」 「だ、だって!可愛いもんは可愛いじゃん…!」 「襲われそうになったんですよ?!分かってます?!」 「わ、分かってるって…!」 城崎怖い…っ! どうしたらいいんだよ…。葉月くん、マジで可愛いし…。 俺、怒れないよ……。 「お兄さん、名前は〜?」 「望月…」 「下の名前、教えてよ。」 「………綾人」 「ふーん?可愛い名前だね?」 きゅーん…。 可愛い……。葉月くん、マジで可愛い。 ミニ城崎だ……。 「おい、葉月。先輩のこと(たぶら)かすな。」 「誑かしてないし〜。てか、兄貴さぁ、露骨すぎんだよ。風呂場にも寝室にもローション置いてるし?引かれるよ?」 「引かれてねーから。」 「内心引いてるって。ね、綾?」 「え、俺?!」 綾?いきなり綾って呼んでくんの? 別にいいんだけど、城崎やべぇくらい怒ってるって! 葉月くん、ちゃんとお兄ちゃんのこと敬えよ…!! 「葉月、マジで今日中に家帰れよ。」 「え〜。やだ。綾と居たいもん。」 「へっ?」 「親父と喧嘩しただけだろ。さっさと帰れ。」 「やーだー。綾〜、怖いよ、あの人。」 ブチギレ城崎と、可愛すぎる葉月くん。 どちらの味方をすればいいのかわからなくて固まっていると、城崎がキッ…と俺を睨んだ。 「先輩……?」 「わ、分かってるって!………葉月くん、おうち帰ろ?お母さんとお父さん、きっと心配してるし…。」 「やだ。てか、ババアには兄貴んとこ行くって言ってきたし。」 「ばっ…?!」 お母さんのこと、ババアだなんて…。 なんて親不孝な……。 愕然(がくぜん)としていると、葉月くんの頭上に本日2度目の城崎の拳骨がお見舞いされた。

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