384 / 1069
第384話
結局1時間の兄弟喧嘩の末、葉月くんは家に帰ることになった。
「綾、タクシー代ちょうだい?♡」
「え、あっ…、いくらくらい…」
「先輩。おふくろが迎えに来るから。いらないです。」
「あ、そうなの…?」
「葉月も先輩にたかるな。」
「いいじゃん。有名企業だし、がっぽりもらってんだろ?」
「そういう問題じゃない。」
お金をもらおうと差し出した葉月くんの両手を、城崎がパシっと叩き落とす。
厳しいお兄ちゃんだな…。
まぁでも、弟が問題児だとこうなるのか…?
「ほら、おふくろ着いたって。」
「ちぇー。仕方ないから帰るか。じゃあね〜、綾。また会いに来るね〜♡」
「二度と来んな。」
城崎は葉月くんを追い出すように外に出して鍵を閉めた。
俺としては車に乗るまで見届けてあげたいけど…。
でも城崎のお母さんに、俺と暮らしてるってバレたらそれはそれで面倒なのか…?
「先輩、ただいまのキスまだなんですけど。」
「え、あ、おかえり…、んっ……」
「一回じゃ足りない。」
「ん…ふ……」
玄関で壁に追い詰められながら、何度も唇が合わさる。
いつもより激しくて深い。
気持ちいい……。
「先輩のバカ。何であんなに葉月のこと甘やかすの?」
「あー、ごめん…。つい、癖で。」
「癖?」
「俺にも丁度葉月くんと同い年の弟がいるんだよ。それで、つい。」
「先輩の弟…っ?!」
あれ?城崎に言ってなかったっけ?
そういえば言ってなかったような…。
「見たい!写真は?」
「えーっと……、あ、あった。これ。可愛いだろ?」
「え……、あんまり似てないですね。というか、若くないですか?13歳差?」
「母さんの妹の子なんだ。訳あってうちで引き取って、正真正銘俺の可愛い弟だよ。」
「だから優しいんですね、弟に。」
「うん。弱い。甘えられると、もうダメ。甘やかしちゃう。」
昔から弟のおねだりに弱い。
だから葉月くんの可愛こぶりっ子は相当効いたなぁ…。
俺の弟は真面目でいい子で、あまりおねだりとかはしてこないから。
話してると久々に会いたくなってきたなぁ。
「俺も甘やかしてよ…。」
「十分甘やかしてるだろ?」
「俺、怒ってるんですからね。」
「何を?」
「葉月のことは下の名前で呼んでるし。おまけに葉月には呼び捨てにされてるし。彼氏は俺なのに。」
ぷくーっと頬を膨らます城崎。
可愛い…。
「俺が好きなのは夏月だけだから…。」
「っ…!」
「も…、恥ずい……。」
「綾人さん、大好き♡」
翌日が土曜日ということもあって、城崎にたっぷり愛されて一晩を過ごした。
ともだちにシェアしよう!