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第385話
あれから再び葉月くんが家を訪れるのはそう遠くなかった。
いや、寧ろ早すぎるくらいだ。
「綾〜♡久しぶり♡」
「久しぶり…?」
「なんでいるんだよ…。」
土曜日の真昼間。
城崎が昼食を作ってくれている時にインターホンが鳴り、出ると葉月くんが扉の前でにこにこと手を振っていた。
まだあれから一週間しか経っていないのに。
あんなに怒られたのに、懲りないんだな…。
「おじゃましま〜す♪」
「いらっしゃい。」
「今日はお泊まりに来たよ♡」
靴をぽいぽいっと脱ぎ捨て、俺の腕に擦り寄ってくる。
うぅ…、可愛い………。
「来なくていい。帰れ。」
「兄貴に言ってないし。綾とエッチしにきたんだから。」
「させるかよ。」
「勝手に言ってな。」
俺から葉月くんを引き剥がしている城崎。
エッチしに来たって……、すげぇストレートだな……。
「えっちはしないよ…?」
「えぇ〜。何で?」
「好きな人とするものでしょ?だから…」
「俺は綾のこと好きだよ?綾は俺のこと、好きじゃないの?」
「うっ……」
何この年上キラー。
年上じゃなくても堕ちるだろ。
可愛すぎる。何で俺の方が身長低いのに上目遣いに見えるんだ?あ、葉月くんがちょっと屈んでるからか。策士だ。
ん?そういえば俺、城崎に対しても年上キラーって感じたことある気がする。
「好きだけど、城崎とは違う好きっていうか…」
「好きならいいじゃん?」
「だ、ダメ…。」
「えぇ〜。いいでしょ?お願い!」
かわいい……。
城崎のわんこモード100%可愛さ全振りって感じだ。
ヤバい、俺。揺らぐな、俺。
「先輩?」
「ひっ…!」
「断りますよね?」
「こ、断るに決まってるだろ…!」
城崎の圧がヤバすぎて正気を取り戻す。
そうだ。この子は城崎じゃないんだってば…。
振り返るときゅるるんお目目の葉月くん…。
「ゴメンナサイ…。」
「………チッ。あとちょっとだったのに。」
?!
さっきまでの可愛さが嘘だったかのように態度を変える葉月くん。
城崎兄弟怖いよぉ……。
「あー、腹減った。兄貴何か作ってるんでしょ?俺も食う〜。」
「お前の分はねぇよ。はい、先輩。今日は明太子カルボナーラリゾットです♡」
「わっ…!美味そう〜!!」
お店で出てくるみたいな見た目といい匂い。
城崎が作るなら、味も間違いない。
「いいなぁ。美味そう。綾、あーん。」
「えっ…。」
「俺お腹すいた…。昨日から何も食べてないの…。」
だから狡いんだって!この上目遣い!
まぁご飯くらいあげてもいい…よな?
一口掬って口に運んであげると、「ん〜♡」と幸せそうにもぐもぐしている。
「うま〜。さすが兄貴の料理。」
「おいこら!おまえは食うな!!」
「綾もあげる〜。はい、あーん♡」
口を開けると、熱々のリゾットが運ばれてきた。
熱いけど、超美味しい。
さすが城崎だ。
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