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第386話

ハフハフと口の中で冷ましながら食べていると、城崎にお皿を奪われる。 「何お前ナチュラルに先輩と間接キスしてんだよ。マジではっ倒すぞ。」 「こわ〜。暴力はんた〜い。」 「よし分かった。これやるから、先輩は返せ。」 城崎は自分の分のリゾットを葉月くんに渡し、俺を膝の上に引き上げる。 何これ、恥ずかしいんだけど。 「し、城崎…?」 「先輩、俺と分けよ?」 「えっと…、それはいいんだけど……。」 「じゃあ何?」 この体勢が恥ずかしいんだけど…!! と言いかけて、圧に負けて口を閉じた。 葉月くんは何事もなかったように、城崎お手製のリゾットをパクパク食べている。 高校2年生ってそりゃ、食べ盛りだもんな…。 「それ食ったら帰れよ?」 「やだ。今日は兄貴んとこ泊まるって、ババアにも言ってきたし。」 「じゃあ俺がおふくろに連絡しとくから。帰れ。」 「は?じゃあ兄貴が綾と暮らしてることバラすけど。」 「…………チッ。」 こ、怖いって……。 今にも兄弟喧嘩が勃発しそうな雰囲気に、おろおろしてしまう。 すると、城崎が俺を見つめて頭を撫でた。 「別に親に隠したい訳じゃないですからね?折を見て俺から言うつもりだから。あいつに言われるのが嫌なだけ。」 「あ、いや…。気にしてねぇよ…?」 「俺が気になっただけ。嫌だけどあいつ泊めるしかなさそうかも…。」 「いいよ。多感な時期だもんね。親と何かあったのかも。」 「俺が絶対先輩のこと守るから。……離れないでね?」 「ん。わかった。」 城崎はぎゅーっと俺を抱きしめて、何回もキスを繰り返した。 弟の前で何してんだよ…、と言いたいところだけど、これくらい見せつけた方がいいのかも…? チラッと葉月くんに視線を移すと、こっちの様子を気にせずスマホを触っていた。 全然見てないじゃん!! 「あ、そういえばさ〜。」 「ん?どうしたの?」 「綾、俺の制服着てみてよ!わざわざ持ってきたんだよね。」 葉月くんは思い出したように紙袋から制服を取り出す。 何の荷物かと思ったら、制服かよ?! 「着ないよ!」 「え〜。似合うと思うけど?」 「もう俺30だよ!?」 「見えな〜い。本当?」 「本当!!」 30歳で制服はさすがに痛いから!! 城崎も何とか言えよと助け舟を求めると、キラキラした目で制服を見ていた。 嫌な予感がする……。 「先輩、着てみてよ。」 「えっ……。」 「学生の先輩とエッチしたい……。」 「はっ?!」 「あ、兄貴珍しく気が合ったじゃん。」 「お前には見せねぇよ。先輩、こっち来て?」 「わっ…、ちょ、待って!」 ズルズルと寝室に連れ込まれ、城崎はガチャンっと扉を閉めた。 中から南京錠までかけて。

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