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第389話
一瞬…かどうかは定かではないが、気を失ってたようだ。
目を開けると、城崎は優しい目で俺を見つめながら頭を撫でていた。
「先輩の制服、サイズ測って頼もうかな…。」
「え?」
「先輩の制服姿、すぐ脱がせちゃったけど、超可愛かった。」
冗談…ではなさそうな口ぶりに、恥ずかしさが増す。
学生って何年前の話だよ…。
短く見積もっても十二、三年前だぞ…?
「先輩と学生の時に会えたらな…。」
「………。」
「もっと長い時間、先輩と過ごせたのにね?でも高校生とか性欲ヤバくて、先輩のこと毎日家に連れ込んじゃうかも。」
いや、今より性欲強かったら、俺死ぬが?
今でいっぱいいっぱいなのに。
こいつの性欲、底なしすぎるだろ。
「あー、でも逆に、俺が制服着て、先輩はスーツ着てってのも現実味あって燃えますよね。」
「は…、え……?」
「俺と先輩6歳差じゃないですか?学生同士ってより、新任教師と高校3年生くらい?どうですか?」
「どうって…?」
な、何言ってんの?
俺に何を問いかけてる?
分からないと顔に書いてあったのか、城崎はクスッと笑って俺にもう一度問いかける。
「先生なのに生徒とセックス。イケナイことしてるみたいで燃えませんか?」
「……!!」
一瞬想像して、目の前の城崎が制服を着ているように見えてしまった。
つい最近、葉月くんの制服姿を見たから容易に想像ができた。
「綾人センセ…♡」
「…っ!!」
耳元で猫撫で声で囁かれ、俺は思わずビクンッと体を揺らした。
ヤバい。沼だ……。
これはダメな気がする…!!
「し、城崎…っ!」
「想像しちゃった?先輩、顔真っ赤。可愛い。」
「?!」
「今度頼んどくね。俺、脚長くて葉月の制服着れないから。」
少し嫌味ったらしく、床に脱ぎ捨てられた葉月くんのスラックスを指差す。
城崎、確かに脚長ぇもんな…。
10頭身?ってやつ?
改めてイカれてんな。モデルか?
「先輩?」
「えっ?!あ、な、何?」
「頼んでもいい?」
「だ、ダメ!!城崎がオーダーしたら城崎が使うってバレちまうだろうが!!」
「じゃあ先輩が頼んでくれる?」
「絶対嫌!!」
「なんてね。最近はインターネットっていう便利なものがあるんですから。」
「ちょ…!と、とにかくダメ!!」
城崎の手からスマホを取り上げる。
今にも「なんで?」と言いたそうな顔をしているが、ダメな理由は一つ。
これ以上、俺が城崎に沼っちゃダメ!!
あと、変な性癖を開拓しそうでダメ!!
あとあと、変態と思われるのもダメ!!
考えれば考えるほど、理由が一つどころじゃなくて、制服を買うのは絶対阻止しようと心に決めた。
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