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第390話

寝室に入ってから数時間。 俺たちはやっと寝室から出た。 「ふぁ〜……、終わった?」 「は、葉月くん?!」 「綾、長いよぉ〜。俺、ずっと待ってたのにぃ…。」 リビングに入ると、葉月くんが伸びをしながら俺に擦り寄ってきた。 どうやらソファで寝ていたらしい。 「おまえ、まだ帰ってなかったのかよ。」 「ん〜。泊まるって言ったじゃん。」 「帰れよ……。」 「それよりどうだった?綾の制服姿、俺も見たいんだけど。」 「超超超可愛かったけど葉月には見せない。あと、女とヤッた後の制服渡すな、馬鹿。」 「あ、バレた?」 葉月くんはベッと悪びれなさそうに舌を出し、城崎から制服の入った紙袋を受け取る。 そして流れるように、俺に渡す。 「綾、着て?♡」 「えっ…」 「ダメだって。先輩、(ほだ)されちゃダメ。」 「う、うん…」 「チッ……」 この兄弟、どうにかしてくれ。 俺城崎には弱いし、年下にも弱いし、葉月くんは城崎に似てるからすげぇ弱い。 城崎がそばに居なかったら、ほいほい制服きてたかもしれない…。 「綾の喘ぎ声、可愛かった。」 「ふぇ?!」 「声大きいからばっちり聞こえてたし?ねー、俺も()かせたい。ダメ?ねー、お願い。」 「駄目……」 「試しに兜合わせだけでもいいよ?あ、素股にする?そうしよっか!…ぐぇっ!!」 前のめりに俺に迫っているところを、城崎に首根っこ掴まれて後退する。 あぁ…、首絞まって可哀想……。 「お前これ以上先輩にセクハラするな!!」 「え〜。兄貴はさっきいっぱいシたでしょ?俺の番じゃん。」 「俺は彼氏だから。お前はただの俺の弟!先輩とは何の関係もねーの!分かったら帰れ!」 「分からないから帰りませ〜ん。」 城崎の手を逃れ、またぴったりと俺に引っ付く葉月くん。 これは城崎もお手上げだ……。 というか、聞く耳すら持っていない気がする。 「葉月くん」 「ん?なーに?綾♡」 俺の話なら聞いてくれるんだろうかと思い、試しに話しかけてみたらあっさりと反応してくれた。 「なんで恋人作らないの?」 「面倒。俺は気持ちいいことできればそれでいいし、でも女はそれ以上を求めてくるじゃん。だから男にしてみたんだけど、男も寄ってくる奴は面倒なのばっか。」 「具体的に何が面倒なの?」 「俺はいろんな人とシたい。その人によって気持ちいい場所は違うし、声も、身体も、反応も違う。それを見るのが好き。でもって、俺も気持ちいい。だけど恋人になったら、いろんな人とシたら怒るじゃん。」 「…………」 そりゃそうだろ。 俺も城崎が他の人とシたら嫌だし。 呆然としていると、城崎にぽんぽんと肩を叩かれて振り返る。 城崎は諦めた顔で首を横に振っていた。

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