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第391話
「そもそもこいつの思考は、俺たちには理解できないんですよ。」
「………」
「うっせーな。兄貴だって、前までセフレばっかだったじゃん。」
「おいっ!」
「しょーたくんでしょ。カイくんにまもるくん、一番長かったのはなるちゃん。あと他には〜…」
「こら、葉月っ!」
「綾の前ではいい子ぶってるみたいだけど?あーあ、綾。悪い大人に捕まっちゃったね〜。」
葉月くんは嫌味っぽく城崎の過去を暴露する。
城崎にセフレがいたことくらい……、知ってる。
知ってたけど、具体的な名前を聞いたのは初めてで、なんか少し……。
「先輩っ?!」
「うわ〜、兄貴が綾のこと泣かせた〜。」
「お前のせいだろうが!!」
涙の一つや二つ、許してほしい。
俺は城崎が浮気をしないって信じてるし、今の城崎の気持ちを大事にしたい。
でもやっぱり、過去だとしても、少しショックだ。
「先輩……。俺、今は先輩だけだよ…?」
「知ってる……。」
「ごめんね。葉月のこと言っておいて、節操なしでごめん。昔のことだから、今更なかったことにはできないけど、本当に今は先輩だけですから…。」
こんなにも真っ直ぐに俺のこと好きでいてくれるから、節操なしだった城崎が想像できないんだよな。
だからこそショックだ。
考えないようにしてた。
城崎の言動や行動が、俺にそんなこと考えさせもしなかった。
「葉月くんのバカ…。」
「えっ?!俺!?」
「……グスッ」
「綾〜、ごめんって。綾も面倒臭いタイプの男だったなんて知らなかったんだよぉ…。」
誰が面倒臭いタイプの男だよ。
葉月くんが変なだけだわ。
とは言い出せず、城崎に抱きしめられながら涙を止める。
「先輩……、好き。大好き。」
「俺も……。」
「愛してるよ、先輩。俺には先輩だけだからね?」
「ん。」
甘い告白を何度もされて、重々に理解している。
激重な俺の気持ちを上回る激重感情をぶつけてくれるのも知ってる。
大好きだから、昔のことでも泣いちゃうんだよ。
「キスして…。」
「いいの?」
「うん。」
城崎は少し葉月くんの方を気にした。
多分俺が気にしてたから、気を遣ってくれたんだと思う。
でももう、今それどころじゃないから。
城崎が優しく重ねてくれた唇を、俺は無理やりこじ開けて舌をねじ込む。
激しいのがいい。
全部忘れさせて、俺だけの城崎って分からせてほしい。
「わー、いいな。俺も綾とチューしたい。」
節操なし空気読めない男は、俺たちの純愛キスを見てもなお更生する気配は感じられなかった。
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