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第392話

涙が引っ込むまでいっぱいキスして、疲れて寝て、夜ご飯を食べて、俺と城崎は一緒に風呂入って、ベッドに潜る。 「おまえはソファだろ。」 「えー。固ーい。ベッドがいい〜。」 「駄目だ。ソファが嫌なら帰れ。」 どうやら葉月くんは本当に泊まる気らしい。 もう22時を過ぎてるし、家に帰すのは可哀想だ。 それにこんな綺麗な容姿、男の子でも危ない。 「城崎、泊めてあげよう…?」 「綾〜♡優しいなぁ。」 「チッ……。俺が真ん中だからな。」 城崎は嫌そうに葉月くんを寝室に通す。 俺を端に寄せ、大事そうに抱きしめた。 葉月くんは広いベッドのほとんどを自由に転がっているなぁと思っていると、突然城崎に体を寄せて、俺に話しかけてきた。 「綾、ごめんね……。」 「………」 「俺、綾がそんなにも兄貴のこと好きだって知らなくて…。無神経なこと言ってごめんなさい。」 反省してるみたいだ。 俺は腕を伸ばして、城崎の後ろにいる葉月くんの頭を撫でる。 「これからはああいうの言わないでほしい…。」 「うん。ごめんなさい。」 「じゃあ許す。」 そう言うと、葉月くんは「やった〜」と嬉しそうに呟いた。 年相応で可愛いところもたくさんあるのに、俺は大人気なく怒ってしまったんだな…と、少し反省する。 「綾…、寝た?」 「起きてるよ。」 「俺、面倒な人は相手にしない主義だけど、綾だけは別。」 「え?」 「綾と寝てみたい。いつか兄貴の目ぇ盗んで、こっそりえっちしようね?……痛っ!!」 「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。」 反省したかと思えばまさかのエッチのお誘いが来て困惑していると、葉月くんに城崎からの拳骨がお見舞いされた。 まぁ、そんな簡単には変わらないか。 「城崎に振られたら、相手してくれる?」 「え!本当に?!」 「振られたらね?」 「やったー!兄貴、いつ別れる?」 「絶対振らないから。間違っても別れる日なんてこないからな。」 「え〜。ケチ。」 城崎は俺を抱きしめる力を強めた。 葉月くんに言ったのは、半分冗談で半分本当。 城崎と別れる気はないけど、もし万が一いつか俺が振られたとしたら、多分俺は未練タラタラだから。 城崎に似た葉月くんに抱いてもらおうなんて、そんな悪いこと考えたりして。 「先輩、絶対離しませんからね。」 「ん。ずっとそばに居て。」 「約束。」 「おやすみ。」とキスして、俺は目を瞑る。 次の日俺は昼まで寝入っていて、知らぬ間に葉月くんは家に帰っていたけど、俺が何もされないか心配で一晩中眠れなかった城崎は、午後から俺の膝の上でずっと昼寝をしていた。

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