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第400話

約束のクリスマスまで、あと一週間を切ってしまった。 今日は城崎が出先からそのまま家に帰るため、帰りは一人。 絶好の寄り道チャンスだ。 やっぱり俺は勝負下着を諦めきれず、あれから色々検索した。 『クリスマス 勝負下着』で検索すると出てくるのは女性用ランジェリーばかり。 まぁでもそれも参考にしながら、城崎の好みを考えてある程度模索した。 普通の……、いつもの勝負下着にしようかなと何度も思ったけど、でもどうしても俺の興味を引いて離さないものがあったのだ。 総レースのメンズボクサー。 透け感もあって、レースだからセクシーで、でも綺麗めのデザインだからいやらしさもない。 これ、下に履いてたら……、城崎、喜ぶかな? 本当はネット注文したかったけど、城崎がいる時間に届いたら終わりだ。 だから今日、店舗まで取りに行く。 仕事終わり、俺は少し離れた駅にある専門店街に向かう。 すごく恥ずかしかったけど、丁寧に梱包された下着を受け取り、店を出た。 受け取ってしまえば恥ずかしさは消え、俺はルンルンと鼻歌を歌いながら駅に向かう。 「あ、もっちーさんだ!」 「圭くん。それに、倉科さん。」 「どうも。」 駅近くの行列のできたカフェから出てきたのは、圭くんと倉科さんだった。 二人とも左手の薬指にお揃いのシルバーリングを嵌め、手を繋いでいる。 「夏月は?」 「あ、えっと、今日は城崎は直帰で…」 「ふぅん。」 倉科さんは城崎がいなくて、少しだけ残念そうだ。 圭くんは不思議そうに俺の紙袋を見ていた。 「それ、何〜?クリスマスプレゼント?」 「あっ…、まぁ、そうなるかな……?」 「えー!いいなぁ!何あげるの?」 「えっと……」 「夏月は物よりあんたの方が喜ぶと思うけど。」 「うん。あの、だから……」 俺は二人に紙袋の中身を耳打ちした。 恥ずかしくて俯くと、圭くんが「きゃ〜♡」と可愛い声を出す。 「それ夏月くん絶対喜ぶと思う!」 「それなら間違いなく喜ぶだろうな。」 「あ、あの…、内緒ですよ……?」 「「わかってるよ。」」 二人とも口を揃えてそう言った。 よ、よかったぁ……。 というか、二人とも下着見て引かないの、優しすぎる…。 「お二人はクリスマスどうされるんですか?」 「家で過ごすよ。その日は急患も取らないし。」 「ねー、もっちーさん聞いてよ!透がね、俺がサンタさんになるって言ってるのに、いらないって言うんだよ!」 「ばーか。それはサプライズするもんだろ。」 「だって早く言いたかったんだもん…。」 ぷりぷり怒る圭くんは相変わらず可愛い。 こんな可愛い子にサンタさんになるなんて言われて断るなんて、倉科さんすごく硬派なんだな…。 「これ使わないからあげる!」 「え、あの…」 「もっちーさん、またね!クリスマス頑張って!!」 圭くんは俺に紙袋を押し付けて、倉科さんの腕に引っ付いて帰って行った。 紙袋には赤い服に白のふわふわ。 多分サンタコス……。 「どうしよう、これ……」 追いかけて返すわけにもいかず、俺はとりあえずそれを家に持ち帰った。

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