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第402話

俺が和食を食べたいと伝えた次の日は筑前煮だった。 いきなり難しそうなところから攻めるなぁと驚いたけど、さすが城崎、味は最高に良かった。 その翌日は西京焼き、そのまた翌日は肉じゃが。 振る舞われる和食料理に毎日舌鼓を打ち、俺が喜ぶたびに城崎も嬉しそうに笑う。 「城崎の和食、おいひぃ…」 「先輩、頬張りすぎ。ご飯は逃げないんですから、ゆっくり食べてくださいね?」 「ん……、やっぱり日本人は和食だな〜。」 白米とも合うし、もともと和食も好きだし。 最近ご飯もおかわりしちゃって、茶碗2杯は食べてる。 「明日はどうしますか?」 「ん〜……。鯖の味噌煮。」 「また和食?」 「食べたくなった。」 「まぁ、先輩がいいならいいんですけど…。」 城崎は夕食を食べ終え、食器を洗ってからこたつに入る。 スマホを見て、材料や作り方を確認しているみたいだ。 俺はこたつで横になり、テレビを見ていた。 旅番組で、愛媛県の道後温泉を特集していた。 「城崎〜……」 「なんですか?」 「俺、ここ行ってみたい。」 「ん?道後温泉ですか?」 「うん。今度行こ。」 温泉、気持ちよさそう。 それに、みかんとか鯛めしとか全部美味そう。 「先輩、温泉好きですよね。」 「気持ちいいじゃん。」 「大衆浴場はダメですからね?」 「えー。本館のお風呂入りたい。」 「だめ。」 「ケチ。」 城崎と付き合うこと、不満があるとすればこれだけだ。 温泉、好きなのに……。 「それまでに下の毛伸ばすから。」 「だめ。剃ります。」 「ねー、お願い。」 「だからダメだって。俺は先輩の体を他の人に見られんのが無理なんです。」 「男風呂で誰も他人の裸なんかじっくり見ねーって。」 「ダメなもんはダメ。そんなこと言ってると、もう温泉旅行なんて連れて行きませんよ。」 むむむ……。 城崎の頑固者! 別にいいじゃん!見られてたとしても減るもんじゃないし!! ぷりぷり怒ってると、城崎がため息をついて、そして俺の隣に横になる。 「先輩、怒んないで…。」 「だって……」 「俺、本当に先輩のこと好きなんです。意地悪したいわけじゃなくて、見せたくないの。先輩だって、彼女の裸、他の男に見られるの嫌でしょ?」 「なっ…!?それは男と女だから!!」 「一緒。先輩はもともと普通の人だったから、男の体見ても…とか思うかもですけど、俺はゲイだからゲイの気持ち分かるし。ゲイが全員そうじゃないけど、性的な目で見る人もいるんですよ。」 「…………」 「もし、たまたま同じ時間にそういう人が入ってたらどうするの?先輩の裸が、俺以外の誰かに性的な目で見られるのなんて耐えられないです。」 「分かってよ…」と祈るように呟きながら、俺を後ろから抱きしめて懇願する城崎。 男に性的な目で見られるなんて、考えもしなかった。 そういえば、城崎が俺に欲情してるのを初めて知った時も、驚いた気がする。

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