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第403話

「城崎……」 「………」 「ごめん。二人で入ろ…?」 後ろから回された城崎の手を撫でる。 城崎は小声で「うん。」と呟いた。 「俺の方こそごめんなさい…。」 「ん?」 「先輩温泉好きなのに、広いところ入らせてあげられなくなっちゃった…。」 「仕方ないじゃん。城崎にとっては彼女を男風呂に入れるようなもんなんだろ?俺もそれは嫌だし。」 「まぁ分かりやすく言うとそうなんですけど…。先輩の楽しみ奪っちゃうのは本望じゃないから…。」 城崎も俺と付き合ってから、妥協すること多くなったんじゃないかなと時々思う。 元々恋愛対象が男の奴だったら、俺と違ってそういうところに気遣いできるだろうに。 「なぁ…、俺って、無意識に城崎のこと傷つけてない?」 「そんなことないですよ。」 「だって……」 「先輩がそうやって俺のこと気遣ってくれてるだけで、俺は十分幸せです。」 「ん…、城崎……」 「好き。大好きだよ、先輩。」 城崎は甘えるようにキスを強請った。 俺は城崎を抱きしめて、それに応える。 男同士の恋愛って、難しいな……。 世間の目ももちろんだけど、二人の考え方とか、そういうの難しい…。 俺も城崎も、将来を共にしたいって同じ理想があるはずなのに、それなのに意見が割れるんだから。 「ちゃんと源泉掛け流しの露天風呂付き選びますね。」 「当たり前じゃん…。」 「みかんジュース飲み比べもしましょうね。」 「そんなんあるの!?したい!」 いきなり大きい声を出したから、城崎はびっくりして俺を見て、そしてくすくす笑った。 「ふふっ…、先輩かわいい。ありますよ。蛇口からみかんジュース出てくるホテルとか。」 「えぇっ?!嘘?本当に??」 「はい。なんと宿泊客は飲み放題らしいです。」 「そこがいい!そこにしよ!」 「客室に源泉掛け流しのお風呂あったかなぁ…?」 旅館を調べる城崎のスマホを覗き見ながら、ワクワクと心躍らせる。 さっきまで言い合いしてたのが嘘みたいに、肩が触れ合う距離感に少しだけドキッとする。 わざと顔を寄せると、城崎はそれに気づいて顔を寄せてきた。 「クリスマスも、旅行も、楽しみですね。」 「うん。」 「先輩、喜んでくれるといいなぁ。」 「クリスマスに泊まるホテル?」 「うん。そこ、夜景が綺麗なんです。先輩、好きかなぁと思って。」 「好き。尚更楽しみになった。」 「食事も美味しいし、ベッドもふかふかって聞きました。」 「なぁ、それ本当に高くない?」 「内緒です。」 この笑顔は絶対高い。 城崎、マジで放っておいたら無限にお金使いそうだな。 「城崎のお金、俺が管理しようか?」 「いいですけど……、ふふっ。」 「なんだよ…。」 「夫婦みたいで嬉しい。」 「………やっぱいい。」 「嘘だって!先輩、俺のお金管理して?」 「も……、じ、自分で管理しろ…!」 「先輩顔赤い〜。かわいい〜。」 「うるさいっ…!」 冗談半分で提案したのに、城崎は俺をぎゅうぎゅう抱きしめて離さない。 もー、やだ……。 俺が恥ずかしがってるのを嬉しがって、城崎は俺の顔を覗き見て楽しんでいた。 寝る前にマジで通帳と印鑑を渡してきたので、俺は中も見ずに鍵付きの引き出しにそれを閉まった。

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