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第420話

部屋でゆっくりし、荷物をまとめる。 チェックアウトは12時だから、あと1時間くらいでこの豪華なホテルともおさらばだ。 「先輩、忘れ物ない?」 「うん。大丈夫。」 「ちょっと、抱きしめさせて…。」 ドアを開ける前に城崎に抱きしめられる。 チェックアウト前に少しラウンジに行こうって話してたんだけど…。 「やっぱりギリギリまで部屋にいない…?」 「いいんですか?キスなんて、帰っていっぱいできますよ?」 「雰囲気が違ぇじゃん。非日常的なとこですんのも悪くないだろ。」 「そうですね…♡」 俺と城崎はチェックアウトギリギリまで、唇を重ね合った。 幸せな時間が過ぎるのはあっという間で、急いでフロントに行ってチェックアウトを済ませた。 ホテルマンのご厚意に甘えて、少しだけ軽食も取らせてもらい、ホテルを出る。 「夢みたいだったな……。」 恋人と高級ホテルでクリスマスディナー。 東京を一望できるスイートルーム。 センスあるクリスマスプレゼント。 「ありがと。本当に嬉しかった。」 「どういたしまして。」 目を合わせて感謝を伝えた。 城崎は微笑んで、俺の手を握る。 なんだか城崎がいつもの何倍も格好良く見えて、胸のドキドキが止まらない。 「離してーって、言わないんですね。」 「…………このままデートしたい。」 「いいの?体、つらくない?」 「大丈夫……。」 「ん。わかった。どこ行きたいですか?」 城崎は恋人繋ぎに握り変え、俺に尋ねる。 仕事終わりでホテルに来たから、コートは着てると言えど、お互いスーツだしな…。 「服買いに行く…?」 「いいですね。そのあとカフェでゆっくりして、イルミネーション行きましょうか。」 「うん。」 もう13時だから、何かしてたらすぐに暗くなってくると思う。 冬至、つい最近だったし。 「イルミネーションとか久々かも…。」 「伊藤さんと別れて以来ですか?」 「んー…、そうかな。友達と行くのもなんか虚しくて、結局行ってなかったからなぁ。」 イルミネーションといえば、冬のカップルの定番のデートスポットだ。 女の子はこういうのが好きなんだなーと、昔は色々調べた記憶がある。 「先輩と恋人らしいことするの、夢みたいでいつもドキドキしちゃいます。」 「バカ……。俺もだよ……。」 「へへっ。嬉しい〜。」 城崎は鼻を赤くしながら、はにかんで俯いた。

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