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第421話

アパレルショップが立ち並ぶ専門店街を二人で見て回る。 城崎はシンプルで落ち着いた大人っぽい服が多い。 モデル体型だからセットアップなんかもよく似合う。 「城崎、これ似合うんじゃない?」 「俺もそれ見てました。似合うかな?」 「着てみたら?待ってるから。」 落ち着いたグリーンのセットアップ。 深緑ってわけじゃなくて、少し明るめのグリーンだから若い城崎だからこそ着れるって感じのやつ。 「先ぱ〜い、見て?」 「……っ」 ガチャ…と試着室から城崎が出てきた。 格好良すぎて息を呑む。 まるで雑誌から出てきたみたいにスタイルも抜群で、左手につけてる俺が誕生日にあげた時計が、より一層スタイリッシュさを引き上げている。 「先輩…?」 「あ……っ、え、似合ってる……。」 「もしかして見惚れてました?」 嬉しそうにクスクス笑う城崎。 ヤバイ…。 昨日から本当に、城崎がずっとキラキラして見える。 フィルターかかったみたいに、変なの……。 「そうだよ……。悪い?」 「えっ」 「見惚れてた…。すげぇ似合ってる……。」 目を合わせて正直に伝える。 城崎はさっきまで余裕の笑みで俺を揶揄っていたくせに、ボンッと顔を真っ赤に染め、お互い見てられなくて俯いた。 「すみません…。これ、着て帰ります。」 「かしこまりました。タグを切るので一度脱いでいただいても構いませんか?」 「はい。」 城崎はそのセットアップに決めたらしく、店員に声をかけた。 対応中、俺も店内を見て回る。 俺は着回しできそうな、無難なグレーのニットと黒いスラックスを選んで手に取った。 「えー、先輩。そんなの持ってるじゃないですか。」 「あ……」 「これ、着てみてください。」 会計を済ませ、後ろから現れた城崎にニットを奪われ、代わりにカラフルなプルオーバーニットを渡される。 カラフルとは言っても、黒、赤、青、黄だけど、俺にしてはチャレンジというか…。 「こういうのって、若い子が着るんじゃ…?」 「先輩見た目若いし、可愛いし。俺は似合うと思いますよ?あー、あとこのバケハとか。」 「そんなの被ったことないから…」 「じゃあ被ってみましょう。」 試着室に押し込まれ、着ざるを得ない状況になる。 こんな若者っぽい服着て笑われたりしないかな…。 物は試しだと言うけれど、勇気がないと試すことすらできないんだよな…。 「先輩、着れた?」 「ま、まだ…」 「遅ーい。俺が着せてあげましょうか?」 「ばっ…?!何言ってんだ!」 「はーやーくー。」 城崎に急かされ、俺は服に腕を通す。 鏡に映る俺は、服のおかげかいつもより若く見えた。 「着た…けど……。」 「かわいー!!!先輩っ、超似合ってます!!」 「そう…かな……?」 「はいっ!すみませーん、これも着て帰ります!」 城崎は店員を呼んで、俺に着せた服もタグを切ってもらった。 会計を済ませ、二人並んで店を出た。

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