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第422話
並んで歩いていると、周りの視線を感じてそわそわした。
「なんで城崎も同じの買うんだよ…。」
「お揃いがよかったからです。」
「…………。」
城崎は俺の会計の時に隣で同じバケットハットを買っていたらしく、お揃いのバケハを被って隣を歩いている俺たちは、男女問わず周りの視線を集めている。
ただでさえ普段着ないような若者の服を着て恥ずかしいのに、こんなにも見られると顔も上げられない。
「せっかく見られてるし、手繋ぎますか?」
「逆だろ、馬鹿!」
「えー。」
周りに見られてるから、繋ぎたいのに繋げないんだよ…!
大好きな大きな手はすぐそこにあるのに、繋げないのがもどかしい。
時々手が触れ合うと、思わずそのまま絡めそうになる。
「繋ご?」
「駄目…。」
「はぁ〜……。早く暗くならないかなぁ。」
まぁ確かに暗くなったらバレにくいけど…。
城崎が色々言われたりするのは嫌なんだもん。
落ち込んでいると、後ろからトントンっと肩を叩かれる。
クリスマスだからカップルは多いが、もちろん友達と遊んでいる人もいるわけで…。
「お兄さん達かっこいい〜♡一緒に遊びませんかぁ?」
「よかったらお茶でもしませんか?♡」
そりゃそうだ。
今日の城崎いつもよりキラキラしてるもん…。
キラキラは俺の幻覚かもしれないけど……。
「ごめんなさい。恋人がいるので…。」
「クリスマスに男二人で歩いてるのに恋人いるとか絶対嘘だぁ!私たちそんな魅力ないですかぁ?」
「そういうわけじゃなくて、本当に…その……」
なんと言えばいいのか言葉に詰まっていると、城崎が俺を抱き寄せる。
固まる女の子たちに爽やかな笑顔で言い放つ。
「分からないかな?」
「「ひぇ……っ」」
「恋人、いるんだよね。」
冷たい声でそう言われた二人は、「すみませんでしたっ」と顔を赤くして逃げていった。
城崎のセクシーボイスに俺もメロメロ。
……じゃなくて!
「何言ってんだよ!?」
「恋人が先輩とは一言も言ってないです。」
「ま、まぁそうだけど!!」
濁してたけど、あれはほぼ言ってるようなもんだ。
小声でよかった。
あれ聞かれてたら、確実に周りにはバレてた。
どうするんだよ、隠し撮りされてSNSなんかにばら撒かれたら一瞬でみんなにバレるぞ。
「お願いだから……。俺と一緒にいるために自重しろよ…。」
「…………ごめんなさい。」
「周りのせいで離れることになるなんて、絶対嫌だから。」
「うん。俺も嫌です。」
「……分かったらいい。カフェ行こ。俺気になってるとこあるんだ。」
俺はずっと城崎と一緒にいたい。
でも、お互い働いて、周りにも認めてもらって、公表するのはその後がいいと思ってる。
自分達から言うのと、バレるのとでは印象も全然変わると思うから。
同じ会社だし、会社のイメージだなんだと言われ、俺たち引き離されちゃうかもしれないし。
だから、まだだ。
俺たちの関係は簡単に周りに言いふらしていいものではない。
しおらしくなった城崎の手を引いて、最近話題のカフェに向かった。
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