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第424話
カランコロン…
Aquaの入り口を開けると鈴が入店を知らせる。
懐かしいな、この音。
「あら〜♡いらっしゃい、夏くん、綾ちゃん♡」
「お久しぶりです、麗子ママ。」
「綾ちゃん、お洋服似合ってる!可愛いわね〜♡」
店の奥から麗子ママが駆けつけてきた。
相変わらず綺麗だ。
手入れとかすごく念入りにしてるんだろうな…。
「これ、ここで食べていい?」
「あら!最近話題のとこのドーナツじゃない?」
「らしいね。先輩が食べたかったんだって。」
「私も頂いていいの?嬉しい〜!お皿とってくるわね♪」
麗子ママはドーナツを見て、すぐにあの店のものだと分かったようだ。
さすが情報通は違う。
お皿に並べたドーナツはカラフルで可愛くて、確かに人気が出るのもわかる。
「麗子ママ、奥入っていい?」
「いいけど、何するの?」
「珈琲淹れてくる。」
「あら、いいのに。私が淹れるわよ?」
「先輩の好みあるから。借りますね。」
城崎はコートを掛けて店の奥へ入っていった。
交代に麗子ママが席に着いた。
「麗子ママから選んでください。」
「え〜、いいの?じゃあこれ♡」
「じゃあ俺はこれにする。」
麗子ママはストロベリーチョコがかかったピンクでカラフルなドーナツ、俺はチョコと生クリームがたっぷりのカロリー高そうなドーナツを選ぶ。
城崎は店の奥で珈琲を淹れて、テーブルに戻ってきた。
「はい、先輩。」
「ありがと。」
「麗子ママ、ブラックでいいよね?」
「いいわよ。ありがとね♡」
「どういたしまして。」
俺の隣に座り、城崎は一番甘くなさそうなドーナツに手を伸ばす。
城崎は甘いのそんなに食べないから、城崎用に選んだやつだ。
「物欲しそうに見てますね。一口食べる?」
「うん。」
あーん、と口を開けると、ちぎらずにそのまま突っ込まれる。
自分で食いちぎれということだろう。
噛みちぎって咀嚼すると、ほんのり甘いドーナツの味。
「………美味い。」
「これ、俺のために選んでくれたんですか?」
「うん。」
「は〜……、好き。」
城崎は俺を抱きしめて、肩にぐりぐり頭を押し付けてきた。
ぽんぽんと頭を撫でていると、目の前でシャッター音が聞こえる。
「…………」
「可愛い!夏くんが甘えてる!貴重!!」
「麗子ママ……」
「あなた達可愛すぎるわよぉ…♡ねぇ、普段も?普段からこんな感じなの??」
麗子ママはふんすふんすと鼻息を立てながら大興奮している。
そっか。たしかに城崎って甘えるキャラじゃないもんね。
俺だけに…、だもんな。
「あ…。そういえば、麗子ママのとこに葉月くん来たんですよね?」
「そうそう!夏くん達同棲したって聞いたから、お祝いしようと思ってたんだった〜!夜、ここで食べていかない?さっき来るって聞いて準備したのよ〜!」
「え!ありがとうございます!」
「先輩、今麗子ママに論点ずらされたの気づいてないんですか?」
麗子ママがバタバタキッチンの方へ行ってしまったのを見て、城崎が顔を上げた。
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