430 / 1069
第430話
週明けはもうドタバタだった。
年末だから仕方ないけど、俺と城崎はほぼ同僚の残した仕事を捌く係。
自分のノルマをクリアしているから定時には帰らせてもらえるけど、人の手伝いでこんなに忙しくなるとは…って感じだ。
でも定時で帰れるから、帰ったら城崎とイチャイチャできるし…。
月曜の夜は次の日も仕事だからって、キスばっかりで全然してくれなくてツラかった。
次の日は強請って強請って強請って、城崎が折れていっぱいシた。
思い出すと顔が赤くなってしまうくらい、めちゃくちゃ感じてた気がする。
焦らしプレイはもうごめんだ。
今日は12月30日。
明日から年末年始休暇なので、今日が仕事納めだ。
今日はみんなで定時に終わらせて忘年会の予定。
みんなで飲むのは久々なので、これが結構楽しみだったりする。
「みんな、終わったか〜?」
「終わりました!」
「私も終わったー!」
「部長、いつでも行けますよ!」
全体的に士気が高く、みんな定時30分前には仕事を終えてタイムカードを切る準備万端だ。
定時になった瞬間、部長を筆頭にみんなタイムカードを切って集合の居酒屋へ向かう。
「綾人〜、先行ってるぞ。」
「おー。涼真は誰と行くの?」
「ちゅんちゅんが場所分かんないらしいから一緒に向かうわ。いつもんとこだろ?」
毎年忘年会の居酒屋は決まってる。
鍋料理が美味くて大人数歓迎の宴会場があるところだ。
酒で盛り上がってきたら余興も始まるし、本当上下関係取っ払った大忘年会って感じ。
「先輩、あんまり飲んじゃダメですからね?」
「えー。今日くらいいいだろ?」
「少しくらいは…。だって、今日秘書課の人たちも来るらしいですよ?俺嫌ですからね、先輩が言い寄られたりするの。」
「あー…、なんかそんなこと言ってたっけ。」
去年は営業部だけだったけど、言われてみれば今年は秘書課の人も一緒にするとか部長が言ってた気がする。
なんで営業部と秘書課?と思いながらも、どうせ部長が秘書課の偉いさんにプッシュされて了承したんだろう。
やだな。
秘書課って美人な人が多いから、城崎が言い寄られてたりしたらすげーやだ。
「城崎こそ…。隙見せたらダメだからな?」
「当たり前じゃないですか。先輩、隣座りましょうね?」
「うん。隅の方でしっぽり飲もうぜ。」
そう伝えると、城崎は安心したようにふにゃりと笑った。
あー……、可愛い。
本当好きだ。
俺にだけ向けられた気の抜けた笑顔、俺にだけ許してくれてる心、俺にだけ見せてくれる独占欲。
「城崎……」
「もうみんな行っちゃいましたよ?」
「うん…、だから……」
「バレたら怖いから、先輩、しゃがんで?」
言われた通りにしゃがみこむ。
デスクの影で、城崎と唇を重ねた。
何度も何度も角度を変えて重なり、唇が離れていくのが寂しくて上目遣いで城崎を見つめる。
「だーめ。これ以上したら先輩えっちな顔になっちゃうでしょ。誰にも見せたくないから、もうダメ。」
「やだ…」
「駄々こねてもダメ。俺だって本当は今すぐ先輩のこと抱きたいんですからね?ほら、諦めて行きますよ。」
俺はムラムラした気分になりながらも、諦めて気持ちを落ち着けてから、城崎と一緒に会社から一番近い駅にある宴会会場へ向かった。
ともだちにシェアしよう!