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第431話
居酒屋に着くと、結構席は埋まっていた。
ちょうど二人分空いてる場所を見つけ、そこへ座ろうとすると、部長に呼ばれる。
「ごめん、ちょっとだけ行ってくる。」
「すぐ帰ってきてくださいね?席、確保してますから。」
「うん。」
部長の下 へ向かうと、隣に座るよう命じられる。
本当は城崎の隣に座りたいんだけど……。
上司から言われて断るわけにもいかず、城崎に目で合図して部長の隣に座った。
城崎すげーむくれてる。
後でどうせ席替えとかあるし、そういう雰囲気になったらすぐ戻ろう…。
「じゃあ忘年会始めるぞ〜!みんな飲み物は持ったかー?」
「「「はーい」」」
「今日は無礼講ということで!カンパーイ!!」
「「「かんぱーーーい!!!」」」
部長が立ち上がり、ジョッキを持って開催宣言をした。
ほうじ茶を飲んでいると、部長にビールを渡される。
「望月は飲める口だったろ?ほら、今日はいっぱい飲んで全部忘れよう!」
「いや……、最近あんまり飲まないように…」
「なーに言ってんだ!ほら、秘書課の美人さんが注 ぎに回ってくれてんだから、まずはグイッといけ!」
部長に言われ、渋々半分ほどビールを飲む。
あぁ…、久々に飲むビール、クッソ美味え…。
城崎の視線ビシビシ食らって痛いけど、ビールに罪はない。
「望月さぁん、お注ぎしてもよろしいですか?」
「え、あ…、はい。」
声をかけられ、思わず返事する。
あったら飲みたくなるから、もう注がないでほしいんだけど…。
振り向くと、秘書課で一二を争う美人と有名な女性だった。
名前はたしか、諸角 さん。
「秘書課の諸角です。今日は営業部の皆さんとご一緒できて嬉しいです。」
「こちらこそ。こんな男だらけのむさ苦しいところ、秘書課の皆さん達には申し訳ないです。」
「むさ苦しいだなんて思ってないですよぉ。みなさん爽やかで、おまけに仕事できて素敵です!」
他部署との飲み会は、こうして社交辞令が飛び交うから苦手だ。
適当に上辺だけの会話をしておこうと愛想笑いすると、諸角さんは俺の隣に座った。
「もう少しお話ししたいので、お隣いいですか?」
「え……、はい…。」
断る理由も見つからず了承すると、諸角さんは隣に座って店員にカクテルを注文した。
普段城崎相手にしてるから、久々に女性を見るとすごく細く見える。
諸角さんは背も高くてモデル体型だから、そりゃ細く見えるよな。
てか、胸元開けすぎだろ。谷間見えてるし…。
「望月さんは普段から結構飲まれるんですかぁ?」
「いや、最近はお酒あまり飲まないようにしてるんですよ。好きなんですけど、弱くて。」
「そうなんですね…。今日は無礼講らしいですし、たくさん飲んじゃいましょ♪」
諸角さんは割と遠慮なく、ぐいぐい詰めてくるタイプだった。
距離が近くて少し戸惑う。
近いよな?うん、近いよ。
初対面の距離ではない、確実に。
助けを求めて城崎の方を見たら、城崎は秘書課の美人に囲まれていた。
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