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第441話

どうしよう。俺、城崎と同棲してるし…。 なんて言おうか。 この帰省の間に城崎のこと伝えるつもりはなかったんだけどな…。 「あー…、あのさ……、俺にも俺の生活があって…」 「何よ?彼女でもいるの?いるなら早く紹介してちょうだい。」 「いや…、あー……」 「千紗ちゃんと別れてからなーんの報告もなし。あんなにいい子逃しちゃって、あれが綾人の婚期だったって、お母さん今でも思ってるんだからね!」 母さんは千紗がお気に入りだった。 お喋りだから相性が合ったのか、会った時は楽しそうによく話してたし。 付き合ってた当時は「いつ結婚するの?」と何度も聞かれ、別れた時は実の娘が出て行ったかのように泣いていた。 あの時は早く結婚して、両親を安心させてやりたいなと思ったりもしたっけ…。 「今度紹介する……。」 「えっ?!本当に彼女いるの?!よかったぁ!お母さん本当に心配してたのよ?仕事ばかり頑張って、少しは息抜きでもして結婚のことも考えて欲しいなって。」 「……………」 「お見合いでもいいかなと思って、ママさん友達に紹介してもらおうと思ってたのよ。よかった、先に知れて。ねぇ、いつ紹介してくれるの?忙しいならお母さんが東京まで行こうか?」 「いや……、向こうも忙しいからまた折を見て……」 言いづらっ…!! 相手が男だとか言える状況じゃないだろ、これ。 反対されたらどうするか…。 いや、多分、というか絶対、反対してくると思う。 母さんは鼻歌を歌いながら台所へおしるこのおかわりを入れに行った。 俺ってば、とんだ親不孝者だな……。 でも城崎と別れるつもりはないし……。 認めてもらうしかないんだよな…、時間が掛かってでも。 「でも綾人に相手がいるなら、大翔が一緒に暮らすのは無理ねぇ…。」 「東京諦めるか、それとも一人で頑張って生活するか。大変だぞ、東京で一人暮らしってのは。」 「そんなぁ…!?」 母さんと父さんにそう言われ、大翔がショックを受けたような顔をする。 勉強頑張ってる大翔のこと応援してやりたいけど、一緒に暮らすのは無理だからな…。 「様子見に行くくらいならできるけど…?」 「本当ですかっ?兄さん、毎日来てくれますか??」 「え、毎日…?」 「週5日でもいいです!顔見せるだけでもいいから…!兄さんが会社帰りに寄れる場所に下宿します!お願いっ!」 俺に会いたいがために頑張ってる弟にこんなにお願いされたら、さすがに無理とは言えない。 可愛い弟の頼みだ。聞いてあげたいというのも兄心だろ。 「顔見せるくらいなら…。」 「本当ですか?!」 「まぁそれはさておき、まずは合格するところからな。」 「頑張ります!!」 大翔はおせちと雑煮を口の中に掻き込み、居間で勉強を始めた。 もちろん俺の隣で。 「兄さん、ここって……」 「ん。ここはこの式を代入して…、ていうか、こんな難しい範囲あんまり覚えてないんだけど。」 「でも合ってますよ?さすが兄さんです!」 褒められて悪い気はしないので、わかる範囲で大翔の勉強に付き合っていたら、あっという間に20時を過ぎていた。

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