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第443話

「痛くないんですか…?」 「うん…?」 「僕も……付けていい?」 「へ…?」 「愛の証なんだったら、僕も付けたい。」 上目遣いでそう言われ、どうしたもんかと頭を悩ませる。 多分大翔のことだから大した意味はない。 好奇心、あと少し俺を好きすぎるところがあるから、自分もしたいという対抗心。 「あー…、恋人が嫌がるからダメ…かな?」 「こんなにあったらバレないですよ、一つくらい。」 「うーん……。どうだろ?」 「だって、ここにも、ここにも、ここにも付いてるし、それにこんなところにも…」 「多いな?!」 大翔に指摘されるまで気付かないようなところにまでびっしり付けられていたらしく、俺は思わずツッコんだ。 あいつ、本当癖みたいになってるだろ…。 今度ちゃんと叱っとかないと…。 「兄さん、付け方教えて?」 「いいとは言ってないんだけどな?」 でももうすぐ高校三年生だし、彼女の一人や二人くらいできるんじゃ…? もはやもうできてる? キスマーク知らないと困るか…? 教えてやるべきなのか……? 「兄さん……?」 「あー…、うん、一つだけな?」 「っ!!」 鎖骨のところを指で示す。 この辺なら城崎もよく付けるし、いちいち覚えてないだろ。 「唇当てて、窄めて吸い上げてみ。」 「はいっ!……んっ…………、あ!できた!付きました、兄さん!」 大翔はキラキラと目を輝かせて嬉しそうだ。 学習能力だけは高いので、まぁこれで付け方は学んだだろ…。 「大翔、ちなみにこれ、普通兄弟には付けないから。」 「……?」 「恋人とか、そーゆー特別な人にだけな。今日は教えるために特別。」 「僕には兄さんが特別なんですけど…。」 「それは兄弟愛だから。そうじゃなくて、恋愛な。好きの種類が違う。」 しっかり区別しておいてやらないと、いざ恋愛した時に困りそうだし。 大翔はそういうとこ、鈍感そうだしな。 俺がそう伝えると、大翔はムッと顔を逸らした。 「そんなの僕、分からないです…。」 「いつか分かるよ。」 「知りたくない…。恋愛なんて非合理的なこと、僕には必要ないです。」 「またそんなこと言って。恋愛は素敵なことだよ。合理的とか非合理的とかどうでもよくなるくらい。大翔はまだ知らないからそんなこと言えるんだよ。」 だって現に俺、すげー幸せだもん。 大翔もきっと恋愛したら価値観変わると思うんだけどな。 なんて、大翔と話してたらいつの間にか21時を過ぎていた。 「やっべ…!」 「兄さんっ?」 「ごめん、大翔!兄ちゃん約束あるから先上がるな?ゆっくり入れよ!」 俺は風呂場を出て適当に体を拭き、脱衣所にあった服を着て二階の自室へ飛び込んだ。

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