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第445話
『ふーん。つまりブラコンの弟におねだりされて、同じくブラコンの先輩が何でも応えるから、調子に乗ってお風呂一緒に入って、あろうことかキスマークまで付けられたって訳ですね。』
「はい……。」
『今すぐ先輩に噛み付いて、その痕を跡形もなく消したいくらい怒ってるって、分かります?』
「すみませんでした……。」
『弟だから何してもいいってわけじゃないんですよ。近親相姦とかも現実にはあるんですからね?』
「以後気をつけます…。」
スマホの前で正座して、城崎に謝罪する。
まだ付けられて時間が経っていないから、寒いのにキスマークの部分を保冷剤で冷やして早く消えるように努めた。
『先輩、明日帰ってきて。』
「えっ…?」
『もう耐えられない。早く俺のこと安心させてよ。』
城崎が切ない声で言うから、俺は思わず頷いた。
俺、城崎のこと不安にさせたんだ…。
傷つけてしまったのかもしれない…。
「本当にごめん…。」
『うん……。もう許してあげますから、だから早く帰ってきてください…。』
「明日親戚に挨拶したら帰る。夜には帰れると思うから…。」
『分かりました。ごめんなさい、予定崩してしまって。』
「ううん。俺も城崎に会いたいからいい…。」
嗚呼……。
声を聞いていたら城崎に触れたくなる。
手の届くところにいないのがもどかしくて、早く明日にならないかとソワソワしてしまう。
『今すごく先輩に触れたい…』
「…っ」
『早く先輩は俺の恋人だって再確認したい。俺だけの先輩なのに。勝手に痕なんか付けさせてさ…。許したけど怒ってますからね、俺。』
「うん…」
『知ってると思いますけど、俺独占欲相当強いですから。家族だろうとなんだろうと、体に印を刻んでいいのは俺だけなんですからね。』
「ん、分かったから…っ」
言われてるうちに無性に恥ずかしくなってきて、待ったをかける。
今すぐにでも帰りたいくらい、頭の中が城崎でいっぱいになる。
『先輩、さっきのとこ見せてください。』
城崎にそう言われ、保冷剤で冷やしていた鎖骨を見せる。
城崎はにっこり嬉しそうに笑った。
「消えてる?」
『完全に消えてはないですけど、だいぶマシになりましたね。それならすぐ消えそうです。本当、俺が気づかなかったらしばらく残ってたと思うと気が気じゃないですよ。』
「悪かったって。」
また謝ると、城崎は呆れたように苦笑した。
近くにいたらきっと、噛み痕とキスマークでいっぱいにされそうだ。
『先輩、電話繋いだまま寝ていい…?』
「いい…けど……」
『髪乾かしておいで。待ってるから。』
時々くる突然のタメ口にドキドキしながら、俺は部屋を出て髪を乾かしに洗面所へ降りた。
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