447 / 1069
第447話
祖母に新年の挨拶をし、亡くなった祖父の仏壇にお参りし、親戚の子供らにお年玉をあげ、そうこうしているうちに時刻は15時を過ぎていた。
子供たちが中庭でキャッキャと騒いでるのを見ながら、縁側でおしるこを食べていた。
母さんのも美味いけど、やっぱり祖母の作ったおしるこの方が深みがある。
ふぅ…と息を吐くと、隣に誰かが腰掛けた。
「綾人、仕事頑張ってるんだってねぇ。」
「ばあちゃん!向こうで話してたんじゃないの?」
「綾人はたまにしか会えないからねぇ。もう東京に戻っちまうんだろ?」
「あー、うん…。でも近いし、すぐ来れるよ。」
「昔から優しいねぇ、あんたは。」
祖母と話していると、優しい気持ちになる。
昔からおばあちゃんっ子で、何かあると祖母に話していたから、ついポロッと口にした。
「ばあちゃん、俺さ……、男と付き合ってるんだよね。」
「へぇ。」
「…………驚かないの?」
「驚いてるよ。でも、綾人の選んだ人なんだから、きっと素敵な人なんでしょうねぇ。」
突拍子もないこと言ったのに、祖母は特段声色を変えるわけでもなく、いつもの穏やかな声で相槌を打つ。
昔からこうしてなんでも受け止めてくれる祖母だからこそ、口にしてしまったのかもしれない。
「ばあちゃん以外、家族や親戚には誰にも言ってないから秘密ね。」
「そうかい。そりゃあ秘密にしないとねぇ…。」
「………変?ダメだと思う?」
「変なわけないでしょう。まぁでも、両親は反対するかもしれないねぇ。」
「………。」
「でもそれはきっと、綾人のことを思ってだからね。綾人の気持ちを踏み躙 るような人がいたら、ばあちゃんがこらしめてあげる。綾人がその人だと決めたんなら、自信持って、その人のこと大事にしなくちゃいけないよ。」
嗚呼、祖母に話して良かった。
少し肩の荷が下りたような気がする。
「曾孫の顔見せられなくてごめんね。」
「そんなこと気にしないの。それに曾孫なら目の前にいっぱいいるしね。」
祖母は中庭で遊ぶ従兄弟の子供たちを見ながら微笑んだ。
何のしがらみもなく成就する関係だとは思ってもいないけど、こうして身内で受け入れてくれる人が一人でもいるだけで、気持ちは全然違った。
「そうだ、綾人、これ。」
「えっ、いいよ!俺もう30だよ?」
「いいから。二人で美味しいもの食べてきなさい。」
祖母にポチ袋を握らされ、遠慮するが頑なに受け取ってくれなかった。
「………ありがとう。」
「どういたしまして。」
受け取ったポチ袋を大事にポケットにしまった。
それを見て、祖母は満足そうに微笑む。
「いつか連れてきてちょうだいね。」
「え?」
「二人で顔を見せにきてちょうだい。腕によりをかけて御馳走振る舞ってあげるからね。」
「……ありがとう、ばあちゃん。」
俺も自然と笑顔が溢れた。
そろそろ解散の時間なのか、みんな呼ばれて、俺も祖母と一緒に居間に戻った。
ともだちにシェアしよう!