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第447話

祖母に新年の挨拶をし、亡くなった祖父の仏壇にお参りし、親戚の子供らにお年玉をあげ、そうこうしているうちに時刻は15時を過ぎていた。 子供たちが中庭でキャッキャと騒いでるのを見ながら、縁側でおしるこを食べていた。 母さんのも美味いけど、やっぱり祖母の作ったおしるこの方が深みがある。 ふぅ…と息を吐くと、隣に誰かが腰掛けた。 「綾人、仕事頑張ってるんだってねぇ。」 「ばあちゃん!向こうで話してたんじゃないの?」 「綾人はたまにしか会えないからねぇ。もう東京に戻っちまうんだろ?」 「あー、うん…。でも近いし、すぐ来れるよ。」 「昔から優しいねぇ、あんたは。」 祖母と話していると、優しい気持ちになる。 昔からおばあちゃんっ子で、何かあると祖母に話していたから、ついポロッと口にした。 「ばあちゃん、俺さ……、男と付き合ってるんだよね。」 「へぇ。」 「…………驚かないの?」 「驚いてるよ。でも、綾人の選んだ人なんだから、きっと素敵な人なんでしょうねぇ。」 突拍子もないこと言ったのに、祖母は特段声色を変えるわけでもなく、いつもの穏やかな声で相槌を打つ。 昔からこうしてなんでも受け止めてくれる祖母だからこそ、口にしてしまったのかもしれない。 「ばあちゃん以外、家族や親戚には誰にも言ってないから秘密ね。」 「そうかい。そりゃあ秘密にしないとねぇ…。」 「………変?ダメだと思う?」 「変なわけないでしょう。まぁでも、両親は反対するかもしれないねぇ。」 「………。」 「でもそれはきっと、綾人のことを思ってだからね。綾人の気持ちを踏み(にじ)るような人がいたら、ばあちゃんがこらしめてあげる。綾人がその人だと決めたんなら、自信持って、その人のこと大事にしなくちゃいけないよ。」 嗚呼、祖母に話して良かった。 少し肩の荷が下りたような気がする。 「曾孫の顔見せられなくてごめんね。」 「そんなこと気にしないの。それに曾孫なら目の前にいっぱいいるしね。」 祖母は中庭で遊ぶ従兄弟の子供たちを見ながら微笑んだ。 何のしがらみもなく成就する関係だとは思ってもいないけど、こうして身内で受け入れてくれる人が一人でもいるだけで、気持ちは全然違った。 「そうだ、綾人、これ。」 「えっ、いいよ!俺もう30だよ?」 「いいから。二人で美味しいもの食べてきなさい。」 祖母にポチ袋を握らされ、遠慮するが頑なに受け取ってくれなかった。 「………ありがとう。」 「どういたしまして。」 受け取ったポチ袋を大事にポケットにしまった。 それを見て、祖母は満足そうに微笑む。 「いつか連れてきてちょうだいね。」 「え?」 「二人で顔を見せにきてちょうだい。腕によりをかけて御馳走振る舞ってあげるからね。」 「……ありがとう、ばあちゃん。」 俺も自然と笑顔が溢れた。 そろそろ解散の時間なのか、みんな呼ばれて、俺も祖母と一緒に居間に戻った。

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