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第448話
「じゃあ気をつけて帰ってね。たまには連絡しなさいよ?」
「兄さん〜…、やだ、帰らないで……。」
祖母の家から実家へ帰る途中、俺だけ駅まで送ってもらった。
運転席には父さん、助手席で母さんが手を振り、大翔は泣きそうな顔で窓から手を伸ばしていた。
「また顔みせるから。お盆に一度帰るように調整する。」
「待ってるわね。」
「大翔、勉強頑張れよ。」
「はいっ…。うぅ〜…、兄さん……」
大翔が後をひかないように、父さんが車を走らせた。
車が見えなくなるまで見送り、改札を通る。
電車はさっき出たようで、次は20分後だ。
スマホを開き、城崎にメッセージを送る。
今から帰る…っと。
送信を押すと、すぐに電話がかかってきた。
『先輩っ!今どこですか?』
「まだ実家の最寄駅だよ。20分後に電車乗るから、それから1時間半くらいかかるかな。」
『じゃあ帰りは19時くらいですね…。早く先輩に会いたいです。』
「ん。俺も。」
『お腹空いてますか?何食べたい?何でも先輩の食べたいもの作っておきますよ。』
「じゃあオムライス食べたい。」
『わかりました。ふわとろのオムライス作っておきますね。』
俺が帰ると分かって上機嫌な恋人が可愛い。
城崎のオムライス久々だ。嬉しい。
「電車来るまで電話繋いでてもいいか?」
『もちろんです!そうだ、先輩今日どうでしたか?お祖母様の家って言ってましたよね?』
「うん。ばあちゃん家。従兄弟久々にあったけど、子どもできてた。すげー可愛かったよ。」
『……………やっぱり先輩も、子ども欲しくなっちゃいましたか?』
「別に。城崎がいりゃ、それでいいし。」
男同士じゃ子どもは産めないから。
そんなの分かった上で告白してきたくせに、この手の話題になるとすげぇしおらしくなるのはなんなんだろうな。
子どものことに関しては、何度も「いい」って言ってんのに。
『先輩、愛してます…。』
「俺も。愛してるよ、城崎。」
『……!!!』
チュッとリップ音を立て、らしくないことをすると、城崎の返事がなくなった。
もしかして引かれた…?
普段こんなことしないし、気持ち悪かったかな……。
不安になっていると、電話の向こうからリップ音が聞こえた。
『嬉しい。すげぇキスしたくなっちゃいました。』
「あっ……そ。」
思わずツンとした冷めた返事をしてしまったが、多分あいつのことだろうから、ただの照れ隠しだと分かってくれてると思う。
ほらみろ、クスクス笑ってる。
『駅まで迎えに行きます。到着時刻分かったら連絡くださいね。』
「わかった。集合は改札出たとこでいい?」
『はい。待ってますね。』
「じゃあまた、後で。」
電車が見えてきて、電話を切る。
最寄駅に着くまで、俺はずっとそわそわしていた。
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