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第456話
しばらくすると、いい匂いが漂ってくる。
ここ二日間くらい雑煮やおせちだったので、洋食の朝ごはんが少し懐かしく感じる。
淹れたての珈琲に、外はカリッと中はふわっとした食パン、目玉焼きにウインナー、今日はヨーグルトも用意してくれている。
「めちゃくちゃ美味そう。」
「先輩昨日頑張ってくれたから、ご褒美です♡」
「昨日のことは言わないで……。」
人生初の潮吹き……。
気持ちよかったけど、しばらくは思い出したくない。
今はまだ、羞恥心の方が勝ってるから。
「あーあ。明日から仕事嫌だなぁ…。先輩ともっとゆっくりしたかったです…。」
「悪かったよ。来年は一緒に過ごそう?」
「二人きりで?」
「いや…、新年の挨拶くらいは行かなきゃだけど…。」
来年には城崎のこと紹介できてるといいな…。
認めてもらえるかは置いといて、ケジメとして、今年は城崎と付き合ってることを両親にちゃんと話したい。
「あ、そうだ。先輩、1月はノルマ以上に仕事頑張ってくださいね?」
「は?なんでだよ?さっきまで仕事嫌だーとか言ってたじゃん。」
「2月初旬に旅行行きましょ。前に言ってた道後温泉。明日部長に有休申請するんで。」
「マジで言ってる?」
「マジですよ。」
城崎はさも当たり前かのようにそう言った。
有休取って旅行行ってきま〜す!なんて、あんな忙しい中よく言おうと思えるな。
いや、でもうちの職場はかなりホワイトだし、人間関係も良好だ。
おまけに城崎の仕事の速さ……、うん、承認されるかも…。
「でもこんな時期に、秘密裏に俺と同時に有休なんて取れるか?」
「先輩と一緒に旅行行くって言います。」
「はぁ?!」
「疑われるくらいなら正直に言った方がいいでしょ。別にみんな俺と先輩が仲良いことくらい知ってますし、会社の同僚と旅行行くのくらいおかしくないですよ。」
同僚つっても6歳差の先輩後輩なんだけど…。
まぁでも、城崎が俺のことすげぇ慕ってくれてるのは周知の事実だしな……。
「わかった。じゃあ仕事頑張ろうな。」
「はいっ♡じゃあ有休申請通ったら、さっそくホテルとかも決めちゃいましょうね!先輩が言ってた源泉掛け流し露天風呂付きで蛇口からみかんジュース出てくるところ探さなきゃな〜♪」
城崎は鼻唄を歌いながら楽しそうに朝ごはんを食べ始めた。
旅行、楽しみだな。
また新しい思い出ができる嬉しさと、行ったことのない場所へ旅行するワクワク、あと城崎と二人きりで遠くに行けるドキドキ。
知り合いがいない環境ってだけで「誰かに見られるかもしれない」という不安材料は取り除けるし、ストレスがなくなる。
「また露天風呂エッチしましょうね♡」
「は…?!ば、馬鹿じゃねぇの?!」
「痛っ!先輩、痛いっ!」
恥ずかしくて足蹴りすると、城崎は笑いながら痛がるふりをした。
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