462 / 1069
第462話
「今年もよろしくお願いしま〜す!!」
年末年始も終わり、初仕事が始まった。
みんなそれぞれに新年の挨拶をして、デスクに着く。
「綾人〜、あけおめ。」
「涼真。あけましておめでとう。今年もよろしくな。」
「おう。番犬に吠えられない程度によろしく頼むわ。」
番犬って……。
たしかによろしくしすぎたら吠えられるな。
「望月さん!柳津さん!あけおめです!」
「こら。目上の人に略語使うな。」
「あけましておめでとうございますです!」
「はぁ…。あけましておめでとう。」
ちゅんちゅんは例のごとく、明るいはいいけど言葉遣いは年始早々説教ものだ。
みんなに挨拶したのち自分のデスクに戻り、デスクに置かれた赤入れされた山積みの資料を見て、涙目で固まっている。
クリスマスから年末にかけて急いで処理したのだろう。
ちゅんちゅんは雑なところがあり、もともと赤入れが多いので急いだならそれ以上だ。
「酷い……。」
「ドンマイ、ちゅんちゅん。」
「営業出る前に資料整理からだな。」
がっくりと肩を落としているちゅんちゅんを横目に、涼真と話を続ける。
「綾人は新年会行くの?」
「あー、行くよ。今日の18時からだっけ?」
「そうそう。俺は今日は暇だし行くけど、綾人はいいの?自由参加だし、帰っちゃえば?」
「部長もいるし、普段から世話になってる人も多いから行くよ。」
今日は新年会だ。
年越し前に忘年会したにも関わらず、スパンの短い飲み会。
部長クラスが飲み会好きだからだと思うけど。
新年会は自由参加で例年あまり人が集まらないので、数年前から複数部署合同の会になった。
「また秘書課の子が来たらどうすんの?忘年会怒ってたろ、あいつ。」
「今日は絶対城崎の隣キープするから大丈夫。あとはお世話になってる人に酒注 ぎに行くくらい。」
「俺にも注 げよ?」
「もちろん。」
涼真と話しながら作業していたら、いつの間にか結構時間が経っていた。
早い人は午前中から営業に出て行っている。
城崎もそのうちの一人で、午前中に出て、昼前にはサクッと契約をもぎ取って帰ってきた。
「先輩、お昼食べましょ。」
「おー。午後から俺もクライアントと待ち合わせあるから、その資料だけ最終確認していい?」
「もちろんです。隣座って待ってますね。」
城崎は俺のデスクの隣に椅子を持ってきて、俺のパソコンを覗き込むふりをして体を寄せる。
時々太腿に手を置こうとするので、パシっと手を払うと悲しそうな顔をしていた。
「集中できねぇ。」
「だって〜……」
「あとで触らせてやるから、今は我慢しろ。」
「やった♪」
城崎は「待て」を覚えた犬みたいにしっかり約束を守り、俺がパソコンを閉じると尻尾振りながらついてきた。
ともだちにシェアしよう!