465 / 1069
第465話
「彼氏取られてご機嫌斜め?」
「千紗……。」
千紗は俺がさやから出した枝豆をパクパク食べていく。
「取るなよ。」
「いいじゃん。どうせいつもの癖でしょ?」
「はぁ?」
「嫌なことあると、さやから豆だけ出すじゃん。」
「マジ?」
「マジよ。別に食べたくて出してるわけじゃないでしょ?食べる時はいつも口までさやもっていって食べるじゃん。」
言われてみればたしかに……。
千紗と付き合ってる時からって、相当長い癖なのに自分で気づいてなかった。
「ごめんね、私のとこの後輩だ、あの子ら。」
「別に。」
「別にって顔じゃないし(笑)正直に言えばいいじゃん。俺の城崎に近付くな〜!って。」
「言えるわけねーだろ。」
「あはは。ごめんって。」
千紗は俺が剥いた枝豆を全て食べて、カシオレを飲んでいた。
城崎はまだ女の子の相手してっし…。
酒飲んでもバレないんじゃね?
この際カクテルでもいいや。
「千紗、それ一口ちょうだい。」
「え?自分のは?」
「俺ウーロンなんだよ。」
「私はいいけど、怒られない?」
「バレないうちに早く。」
千紗からグラスを受け取り口を付けようとした瞬間、後ろから手首を掴まれる。
さっきまで女の子と話してたはずなのに、めちゃくちゃ怖い顔で俺のこと睨んでる。
手首痛ぇーし。
「先輩、何してるんですか。」
「………味見?」
「しらばっくれないでください。元カノと間接キスして俺が怒らないとでも思ってるんですか?」
「い、痛いっ!ごめんなさいっ!」
ぐにゃ〜っと手首を曲げられて、謝りながらグラスを離す。
城崎は俺から取り上げたグラスを千紗に返した。
「餌付けしないでください。」
「ごめーん。」
「あと、さっきの枝豆の癖、俺も知ってましたから。」
城崎はムッとした顔で千紗に言った。
え、城崎も知ってたんだ…。
早く言えよ、恥ずかしいな……。
と、俺はそのくらいにしか思っていなかったが、千紗が堪えきれないように笑い出した。
「ぷっ!あはは!ごめんっ、我慢できないっ!あはは!」
「な、なんだよ…?」
「だって…!城崎くん、私のがマウントに見えたってこと?プフ…っ!今更振った元彼のことでマウントなんか取らないってば!」
「そ、そんなこと思ってないだろ!な、城崎?」
「…………」
城崎に尋ねると、城崎はぷーっと頬を膨らましてむくれていた。
俺のお腹に手回して千紗から引き離して、まるで自分のものが他人に取られないように守るこどもみたいに。
「城崎、マウントに見えたのか?」
「………はい。」
「俺と千紗が今更くっつくわけないだろ?」
「でもなんか嫌だったんです…。」
可愛い……。
人目がなければ間違いなくキスしてた。
よしよしと頭を撫でると、少しだけ機嫌が良くなったようだ。
「お邪魔虫は退散します。」
「おー、じゃあな。」
千紗は場を荒らすだけ荒らして、自分の席へ帰っていった。
ともだちにシェアしよう!