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第469話

有休のために今月はいつもより頑張らなきゃいけないのに。 城崎のやつ…、ほんとに分かってんのかよ…。 「その様子じゃ、今日は営業無理そう?」 「あぁ。気にせず行っていいよ。」 「若い恋人を持つと大変だな。」 「本当に…。」 幸せいっぱいだけど、どうしても体力だけは歳に逆らえない。 悔しい。 年々感じる体力の衰えにがっくりと項垂れる。 「もーちーづーきーさん♪」 「わぁっ?!ちゅんちゅん?」 「昨日の新年会どうでした〜?珍しい人とかきてました?」 「あー……、社長が来たくらい?」 「しゃ、社長来たんすか?!えー、行けばよかったです。」 「なんで?」 「だって顔覚えてもらったら出世できるかもじゃないですか!」 ちゅんちゅんの脳内は相変わらずお花畑だなぁ。 そんな簡単に昇進できたら苦労しないっつーの。 「あ、それより望月さんにお願いしたいことがあって〜」 「ん?なに?」 ちゅんちゅんは周りに聞こえないように声のボリュームを落として、俺の耳元で話しかけてきた。 「望月さんって、城崎さんと同棲してるんですよね?」 「んー、まぁ…そうだな。」 「一回お邪魔したいんですけど、ダメですか?」 「え、なんで。」 「俺もそろそろ彼女と同棲しようと思ってるんですけど、どんなお家か参考にしたくて!」 純粋すぎるほどのちゅんちゅんの真剣な眼。 俺と城崎で折半してるから、そこそこいい家住んでるし、まだ1年目のちゅんちゅんには真似できないんじゃないかとは言い難い。 見たら納得してくれるのか? 「せーんぱいっ♡内緒話ですか?」 「あ?ちげーよ。ちゅんちゅんが家来たいんだってさ。」 「へぇ。なんでですか?」 「彼女と同棲すんのに参考にしたいんだと。」 俺がそう言うと、ちゅんちゅんは城崎をキラキラした目で見つめる。 「参考にならないと思うけど。」 「へ?」 「家賃も高いし、家具もこだわってるし。」 「………」 「彼女が何の仕事してるか知らないけど、そんなに出せないでしょ。」 城崎の奴……。 俺が言いにくかった本音をズバッと言った。 ちゅんちゅん、すげぇ悲しそうな顔してるんだけど…。 「で、でも一回だけ見てみたいです…!」 「別にいいよ。ね、先輩?」 「あぁ。城崎がいいなら俺は別に…。」 「やったー!」 「なになに?家行くの?俺も行きたい!」 途中から涼真も会話に入ってきて、再来週くらいの週末に家に二人が遊びにくることになった。

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