469 / 1069
第469話
有休のために今月はいつもより頑張らなきゃいけないのに。
城崎のやつ…、ほんとに分かってんのかよ…。
「その様子じゃ、今日は営業無理そう?」
「あぁ。気にせず行っていいよ。」
「若い恋人を持つと大変だな。」
「本当に…。」
幸せいっぱいだけど、どうしても体力だけは歳に逆らえない。
悔しい。
年々感じる体力の衰えにがっくりと項垂れる。
「もーちーづーきーさん♪」
「わぁっ?!ちゅんちゅん?」
「昨日の新年会どうでした〜?珍しい人とかきてました?」
「あー……、社長が来たくらい?」
「しゃ、社長来たんすか?!えー、行けばよかったです。」
「なんで?」
「だって顔覚えてもらったら出世できるかもじゃないですか!」
ちゅんちゅんの脳内は相変わらずお花畑だなぁ。
そんな簡単に昇進できたら苦労しないっつーの。
「あ、それより望月さんにお願いしたいことがあって〜」
「ん?なに?」
ちゅんちゅんは周りに聞こえないように声のボリュームを落として、俺の耳元で話しかけてきた。
「望月さんって、城崎さんと同棲してるんですよね?」
「んー、まぁ…そうだな。」
「一回お邪魔したいんですけど、ダメですか?」
「え、なんで。」
「俺もそろそろ彼女と同棲しようと思ってるんですけど、どんなお家か参考にしたくて!」
純粋すぎるほどのちゅんちゅんの真剣な眼。
俺と城崎で折半してるから、そこそこいい家住んでるし、まだ1年目のちゅんちゅんには真似できないんじゃないかとは言い難い。
見たら納得してくれるのか?
「せーんぱいっ♡内緒話ですか?」
「あ?ちげーよ。ちゅんちゅんが家来たいんだってさ。」
「へぇ。なんでですか?」
「彼女と同棲すんのに参考にしたいんだと。」
俺がそう言うと、ちゅんちゅんは城崎をキラキラした目で見つめる。
「参考にならないと思うけど。」
「へ?」
「家賃も高いし、家具もこだわってるし。」
「………」
「彼女が何の仕事してるか知らないけど、そんなに出せないでしょ。」
城崎の奴……。
俺が言いにくかった本音をズバッと言った。
ちゅんちゅん、すげぇ悲しそうな顔してるんだけど…。
「で、でも一回だけ見てみたいです…!」
「別にいいよ。ね、先輩?」
「あぁ。城崎がいいなら俺は別に…。」
「やったー!」
「なになに?家行くの?俺も行きたい!」
途中から涼真も会話に入ってきて、再来週くらいの週末に家に二人が遊びにくることになった。
ともだちにシェアしよう!