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第472話
城崎と濃密な一日を過ごし、気づけば日曜日。
朝から城崎に起こされて、まだ重い眼を擦る。
「先輩、おはようございます。」
チュッ…と触れるだけのキスをして、城崎は俺から布団を取り上げる。
「寒い……。」
「朝ごはんできてますよ。」
「食べる……。」
「はい。じゃあ起きましょう。」
城崎の手を握ると、グイッと力強く引き寄せられて体が起きる。
そのまま倒れ込むように城崎に抱きつくと、「仕方ないなぁ。」って言いながらも、俺を抱きしめて微笑んでいる。
「先輩、今日は美容院行きますよ。」
「え?」
「先輩、前に美容院こだわりないって言ってたじゃないですか?今日は俺の行きつけのとこ予約してるんで、一緒に行きませんか?」
たしかに俺は城崎の言う通り、一応店は固定しているものの単に家から近いという理由だけで特にこだわりはない。
なんなら引越しした時からは、ふらふらと適当に近くの美容院に切りに行っていた。
言われてみれば髪伸びてきたな…。
「じゃあ行く。なんて店?」
「Spica っていうところです。ここから電車で20分くらいですかね。」
「へぇ〜。」
リビングに移動しながらスマホで検索してみる。
口コミ評価も良く、あの城崎が通うほどなんだから良いところなんだろうな。
それに、いつも城崎をめちゃくちゃ格好良くしてくれる神美容師の顔も拝んでおかなければ…。
「俺の担当さん、透さんと一緒で、Aquaで知り合ったゲイ仲間なんですよ。先輩のことも話してます。」
「そうなんだ。なんか恥ずかしいな。」
「大丈夫ですよ。向こうもパートナーいますし。」
「そっか。で、何時に予約してんの?」
「14時から予約してます。お昼食べてから向かえばちょうど良いと思いますよ。」
「オッケー。」
城崎が用意してくれた朝食を食べながら返事する。
顔を覗き込んでくるので、何かと思って目を合わせる。
「美味いよ?」
「そうじゃなくて…、体、大丈夫ですか?」
「へ…?」
「昨日結構激しくしちゃったから…。怠いならまた今度に変更しますし…。」
「……っ!大丈夫…だから……。」
昨日のことを思い出し、カッと顔が熱くなる。
照れ隠しに口いっぱいにごはんを頬張って、ゴホゴホと咽せた。
「もぉ〜…。先輩、慌てて食べなくてもごはんは逃げませんから。」
「ゴホッ……、わ、悪い…。」
「なーんてね。照れ隠しでしょ?」
「ブフッ…!!ゴホゴホッ…」
気持ちを落ち着かせるために珈琲を飲んでたら図星を突かれ、更に咽せこんでしまった。
そんな平和な午前中を過ごし、気づけば昼食の時間になっていた。
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