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第473話

電車で数駅、そこから少し歩いたところに目的地はあった。 綺麗に整備された通りの一角。 都会なのにビルに併設されたわけでもなく、小洒落た外観の美容院。 金持ちそうな人や、サングラスを付けキャップを被った変装した有名人っぽい人が出入りしている。 「城崎……、いつもこんなとこ行ってんの?」 「はい。あ、拓磨(たくま)さん!こんにちは。」 城崎は店の前で見送りをしていた背の高い爽やかイケメンに声をかけた。 これがまた鼻筋通って唇薄くて、優しそうな顔。 モテるんだろうな…。 うちの城崎の方が格好良いけど……。 「こんにちは。久々だね、夏月くん。」 「お久しぶりです。今日は大切な人と来ました。」 「へぇ。じゃあそちらが例の?」 「はい。綾人さんです。俺の恋人の。」 いきなり名前を呼ばれてドキッとした。 不意打ちはダメだろ! 赤くなって慌てていると、手を差し伸べられた。 「Spicaの店長をしています、新田(にった)拓磨(たくま)です。夏月くんの担当美容師をさせて頂いてます。」 「え、あっ…、望月綾人です。その…っ、城崎の……恋人………です……。」 「ふっ…。可愛らしい方なんですね。どうぞ、中へ。」 こんなナチュラルに城崎の恋人を名乗ってよかったのかとドキドキしながら、新田さんに案内されるまま城崎と店の中へ入る。 外観に負けず劣らず、内装も綺麗で雰囲気のある美容院だ。 「今日は二人とも俺指名でいいんだよね?」 「はい。是非、拓磨さんに先輩のカットをお願いしたくて連れてきちゃいました。」 「オッケー。どっちから始めようか?」 新田さんに聞かれ、城崎と目を合わせる。 「先輩からどうぞ。俺はそこで雑誌見ておきます。」 「了解。じゃあ望月さん、こちらへどうぞ。」 「は、はいっ!」 なんかいつもの美容院と違って緊張する。 スタイリングチェアに座り、鏡に向き合う。 「望月さんはどんな髪型がいいとか希望ありますか?」 「え…、いや……。特に……。」 「おまかせでいいですか?」 「はい……。」 「ふっ(笑)望月さん、緊張しすぎ。肩の力抜いてリラックスしてくださいね。望月さんにとびっきり似合うヘアースタイルにしますから。」 新田さんはガチガチに緊張している俺を見て、優しく笑う。 俺ってば、営業の時もこんなに緊張しないのに。 城崎の友達相手に情けなさすぎる……。 「髪質良いですね。指通りがいいし、ハリとコシもあります。普段はどんなシャンプーを使ってますか?」 「特に気にしてなかったです。家に置いてあるのを…」 「あぁ、そっか。夏月くんと暮らしてるんでしたっけ?じゃあきっとうちで販売してるのを使ってくれてるんだ。」 「このシャンプーすげー良い匂いで、好きなんです。」 「それはよかった。結構お客様からも好評で、リピートしてくださる方も多いんです。」 新田さんは話しながらシャキシャキと髪を切っていく。 シャンプーといえば、城崎の髪の匂い好きだったな…。 今じゃ同じ匂いなんだけど、城崎本当いい匂いするんだもん。 ちらっと城崎が座っている方を見ると、城崎は俺の目線に気づいてひらひらと手を振ってくれた。

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