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第474話

新田さんは髪を切りながら、俺に色々質問を投げかける。 「望月さんは、夏月くんと同じ職場なんでしたっけ?」 「はい。」 「夏月くん、配属先発表された日にも一緒に飲んだんですけどね、その時にすごく好みの人がいたって、珍しく大はしゃぎだったんですよ。」 「そうなんですか?」 「思い出すと懐かしいです。夏月くん、普段はクールじゃないですか。その日から会う度に望月さんの話しててね、それがすっごく無邪気で、やっと年下っぽい一面が見れたなぁってツレと話してたんですよ。」 知らないところで城崎が俺のこと話してたって、少し恥ずかしい。 しかも、城崎が一年目の時の話だよな? あー…、やばい。嬉しい……。 「二年目になってからあまり飲むことはなくなったんですけど、こうして髪を切りに来てくれるから、その度に望月さんのこと聞いてたんです。やっと想いが実った、毎日幸せだーって、話すトーンや表情から分かるんですよね。」 「………///」 「だからずっとお会いしたかったんですよ、望月さんに。あのクールな夏月くんが思い出すだけで表情緩めるって、どんな素敵な人なんだろうって。」 「俺みたいなので、すみません…。」 「いや?なんか予想超えてきた感じです。とっても素敵な方で安心しました。………と、お話中悪いですが、髪の長さどうですか?」 鏡に映る俺はだいぶさっぱりとした長さになっていた。 でもさっぱりと言っても、男らしすぎず少し可愛さもあるような、そんな髪型。 「いかがですか?」 「こんな髪型初めてなんですけど…。似合ってますか?」 「はい、とっても。一度シャンプーさせて頂いてもよろしいですか?」 「はい。お願いします。」 シャンプー台に案内され、目元に温タオルを乗せられる。 あー、気持ちいい……。 油断すると、このまま寝てしまいそうだ。 「お湯加減や力加減、大丈夫でしょうか?」 「はい……。すっごく気持ちいいです………。」 「ありがとうございます。」 うっとりするような適度な指圧。 気持ち良すぎて、一瞬寝てしまった。 シャンプーを終え、鏡の前に戻り、ドライヤーで髪を乾かしてもらう。 最後に仕上げとスタイリングをしてもらって完成だ。 「こんな感じに仕上がりましたが、いかがですか?」 「いい感じです。今までと違うんで違和感はありますけど…。」 「すぐ慣れますよ。あ、夏月くん呼んできますね。」 新田さんは城崎を呼んで、こっちに戻ってきた。 城崎は俺を見て、花が咲いたように笑う。 「先輩、可愛い。」 「…っ」 「すげぇ似合ってます。」 恥ずかしくなって顔を逸らす。 次は城崎の番だから、俺と交代だ。 待合に行こうとすると、すれ違いざまに耳打ちされる。 「あとでいっぱい触らせてね?」 「…っ!?」 色んな意味を含んでそうな囁きに、俺は両手で耳を隠して待合に小走りした。

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