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第483話
就職の次にデカいイベントマスは結婚だ。
もちろんいち早く辿り着いたのは城崎。
「城崎さん、どれ連れていきますか?今ならどの子でも…、って、あぁ!?」
「先輩しか連れていかねぇよ、バーカ。」
通常であれば結婚マスに着いた人は、使われてない異性のコマを車に乗せるんだけど、城崎は俺の車から俺のコマを取って隣に乗せた。
「ちょっと!それじゃゲームになりませんよ!」
「先輩の空いた車には適当になんか挿しといて。俺の隣は先輩じゃないと嫌。」
「城崎さん!!」
「いいよね、先輩?」
俺の車から人が消えたけど、でも城崎の隣に他の人がいるなんて想像するだけで嫌だ。
俺が頷くと、城崎はご機嫌な様子でみんなから祝い金を巻き上げた。
俺の車には別の男のコマを乗せ、設定はさっきのままでゲームは続行された。
「結婚マス着いちゃった…。」
俺も隣に乗せるなら城崎がいい。
どうすればいいかわからず城崎を見ると、城崎はしれっと俺の車の隣に女のコマを乗せた。
「先輩は俺の隣に乗ってるから、それ先輩じゃないんで。」
「あ…、そうなの…?」
「うん。」
城崎が言うならそうらしい。
俺のコマは俺じゃないから、女と結婚してもいいそうだ。
全員が結婚マスを通り過ぎ、どんどん人生は進んでいく。
俺と城崎の車は子一人作らず金だけが増えていき、ちゅんちゅんの車は子沢山の満席状態。
遊園地マスの入場料で破産したのは、本当に腹が痛くなるくらい笑ってしまった。
「ちゅんちゅん本当不憫な。」
「柳津さんは平凡ですね。」
「あいつ、結婚マス止まった後からやべぇだろ。」
「これが望月さんパワーなんですね…。」
城崎の手持ちだけ10万ドル札が何枚も並んでいる。
俺と涼真は平凡、ちゅんちゅんは約束手形で真っ赤だ。
優勝は目に見えている。
「あ。」
ゴールに向かって突き進んでる最中、城崎があるマスに止まり、声を出した。
「どうした?えっと……、養子をもらう?」
「へぇ、こんなマスあったんだ。」
読み上げると、涼真が反応した。
城崎の顔を見ると、俺の方をじっと見ていた。
「先輩……、子ども引き取ってもいい…?」
「え?何で俺に聞くんだよ。」
「俺と先輩の人生だから。」
「うん?いいよ。」
ゲームだし。
実際の話だったらもう少しちゃんと考えなくちゃいけないかもしれないけど、城崎が欲しいというなら、俺は前向きに検討したいと思ってる。
俺が了承すると、城崎はパァっと表情を明るくし、俺の前に男のコマと女のコマを並べて尋ねる。
「男の子にしますか?それとも女の子?」
「城崎はどっちがいいの?」
「うーん。悩みどころですね…。でも男の子かな。」
「じゃあ男の子にしよ。」
「はいっ♪」
城崎は嬉しそうに、車に男の子のコマを乗せる。
「俺たちは一体何を見せられてんだ…?」
「さぁ……?」
涼真やちゅんちゅんの呟きなど一切気にせず、城崎は我先にと1番にゴールに辿り着いた。
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