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第484話

夕方になり、涼真とちゅんちゅんが帰り支度を始める。 夜ご飯はと尋ねたが、城崎に悪いから帰るらしい。 「お邪魔しました。」 「綾人、城崎、今日は邪魔したな。」 「ううん、気をつけてな。また週明け職場で。」 ひらひらと手を振って見送る。 二人が扉を出てすぐ、城崎は俺を壁に押しやり、キスを迫った。 「んっ、ん…、ぁ……」 股間を腹に押し付けられ、心臓が早鐘を打つ。 城崎のシャツを握ると、ズンっと腰を振られた。 「ちょっと待てって…」 「先輩っ、先輩…」 「シたいの…?」 「うん。」 お腹から伝わる下腹部の熱さ。 嫉妬するたびこんなになってるの、可愛いけど困ったものだ。 というか、今日は嫉妬する要素なかった気がするけど…。 城崎のキスを受け入れながら、そんなことを考えていると、腹の虫が鳴いた。 「先輩、お腹空いたの…?」 「空いたけど、いいよ。」 「大丈夫。夜まで我慢します。でもちょっとだけ甘やかしてほしい。」 早急に俺を抱きたいのかと思っていたが、どうやらちゃんと理性はあるらしく、今の俺に欠けた欲を優先してくれるようだ。 その前にまずは甘やかしてやらないとな。 「おいで。」 「はいっ♪」 ソファに座って膝を叩くと、城崎は嬉しそうに俺の太腿に頭を乗せた。 頭を撫でると気持ちよさそうに目を閉じ、俺に身を委ねる。 可愛くてつい、唇や耳、頬などいろんなところに手を滑らせる。 「先輩、くすぐったい…」 「ダメ?」 「ダメじゃない。もっと触って?」 城崎は聞いたくせに嫌ではないようで、俺の可愛がりを受け入れた。 ある程度甘やかすと満足したらしく、名残惜しそうに俺から離れて、夕食を作りにキッチンへ向かった。 俺は来月頭に城崎が予約した宿について見てみたり、周りの施設や観光スポットを検索していた。 「先輩、行きたいところある?」 「ん?いや、見てるだけ。」 「どこか行きたいところあったら、言ってくださいね?」 料理中、城崎は俺のタブレットを度々覗きにきた。 旅行は宿も観光地も、ほとんど城崎が決めてくれていた。 本当、なんでも出来るよな、こいつって。 「城崎、ここは?」 「あぁ、下灘ですね。俺も気になってました。行きましょうか。」 「やめたってことは遠いのか?」 「電車で少しかかりますけど、時間もあるし行けますよ。行きたいの俺だけだったらと思って、リストから外しただけです。」 「遠慮はやめろよ…。俺と城崎は対等だって言ってんだろ?」 「すみません。じゃあ、行きたいから予定に組んでもいいですか?」 「ん。」 城崎はいつも俺ばかりを優先するから…。 小さくため息をついて、俺もキッチンへ向かい、料理の手伝いをした。

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