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第486話

2月になってすぐ、待ちに待った有給休暇。 仕事を頑張ったご褒美だ。 「先輩、準備できました?」 「あと上着決めるだけー。」 クローゼットでアウターをどれにするか悩んでいると、城崎が後ろから手を伸ばしてくる。 「これがいいんじゃないですか?」 「ん。じゃあそれにする。」 城崎が選んだピーコートを羽織って、荷物を持って玄関に向かう。 靴紐を結んでいると、城崎は時計を見て急かしてくる。 「早くしないと遅れちゃいますよ?」 「あ、ちょっと待って。」 「忘れ物?」 「うん。」 城崎の後頭部に手を回して、グッと引き寄せる。 チュッと触れるだけのキスをして、ぽかんとしている城崎を置いて玄関を出た。 ふふっ♪ いつもされてばっかりだから、不意打ちが成功すると嬉しい。 「うわっ?!」 「先輩が悪い。」 「ん〜っ!!」 腕を引かれて玄関に戻され、唇が重なる。 ぬるりと舌が入ってきて、俺は城崎の胸を叩く。 「ん〜!ん!んん!!」 「ん?なぁに、先輩?」 「早くしないと遅れるって言ったの、城崎じゃん!」 「先輩が可愛いことするから。」 「電車何時?」 「8時26分。」 時計を見ると現在8時16分。 駅までは5分だけど、荷物も多いし…。 「も…、ダメッ!」 「え〜?もうちょっとだけ♡」 「んんっ…、ぁ♡」 城崎のテクニックを前にして、俺が腰砕けにならないわけがなく……。 チュッチュッ…て好きなだけキスされて、好きなだけお尻揉まれて脚の力が抜ける。 崩れ落ちないように城崎の服を握って、上目遣いで見つめる。 いつもならここから本番が始まったり始まらなかったり…なんだけど。 「先輩……、マジで時間やばいかも。」 「え…?」 「走りますよ!!」 「え〜?!!」 飛行機で行くから早めに空港着くように、少し電車の時間には余裕あると思ってた俺が馬鹿だった。 そうだ。 社員旅行の時に知ったじゃん、城崎が空港ギリギリに行くタイプだってこと。 どうやら今回も時間はタイトだったらしく、俺と城崎は旅行用バッグを持ちながら全力で駅まで走ったのだった。

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