487 / 1069
第487話
「いや〜、間に合ってよかったですね!」
「…………」
家を出たあと、腰砕けになった俺が走れるわけもなく、予定の電車を逃した。
乗り換えなどもあるので、少しずつ乗る予定をしていた電車がずれていき、空港には搭乗時刻ギリギリに滑り込み、やっと席に着いた。
家から駅、乗り換え、そして空港に着いてから搭乗口やらなんやらと走り続け、俺は只今息切れ中だ。
隣に座る城崎は涼しい顔してる。
腹立つ。これが歳の差か…。
「先輩、何か軽食食べますか?」
「いい…。気持ち悪い……。」
「なんか飲みます?」
「水…。」
城崎はCAにミネラルウォーターを頼み、俺に手渡した。
喉を潤して、城崎に渡す。
城崎の肩に頭を置いて目を瞑ると、今にも寝てしまいそうになった。
「可愛い…。先輩、寝ていいよ?昨日遅くまで、お仕事頑張ったもんね?」
「それより朝走ったことの方がしんどい…。」
「それはすみませんでした。」
「いいよ。」
公衆の面前なので甘えるのは自重する。
これも甘えてるように見られるかもしれないけど、肩に寄りかかるくらい許してほしい。
「向こう着いたら何しましょうか?」
「ん〜………」
「まずは鯛めし食べたいですよね。美味しいところ調べたので、そこに行きましょう。」
「ん。」
「そのあと松山城行きましょう。松山城の後は道後温泉に向かって、一旦ホテルに荷物置いて、温泉街の観光しましょうか。」
「わかったぁ…。」
スケジュールは全部城崎に任せ、俺は適当に相槌する。
適当とは言っても、ちゃんと話は聞いているんだけど。
鯛めし楽しみだなぁ。
眠気でふわふわした頭で、鯛めしを想像しながら涎を垂らしていると、城崎が耳元で囁く。
「夜は寝かせてあげる自信ないから、今しっかり寝てくださいね?」
「っ…?!」
「あ。起きちゃった。」
「ば、バカ!!」
逆隣に聞こえたらどうすんだ!?って飛び起きると、反対側の席に座っている人はイヤホン付けて、音漏れするくらい爆音で音楽を聴いていた。
ほっと安心してため息をつき、もう一度城崎の肩に頭を置く。
「寝ちゃうの?」
「今寝てろって言ったろ…。」
「起きたから、嫌なのかと思って。」
あー、もう…。
絶対分かって言ってるだろ、こいつ…。
「…………嫌じゃない。」
「ふふっ♪先輩大好き♡」
城崎はやっと満足したのか、俺にブランケットを掛けて、静かに本を読み始めた。
ともだちにシェアしよう!