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第493話

温泉街を散策し、みかんの加工品がたくさん売っているお店や、タオルのお店、和菓子屋などいろいろなものを見て回る。 寒いけどみかんジェラートなんかも美味しかった。 駅前のカラクリ時計のすぐ近くにある足湯で暖を取っていると、若い女の子二人組に話しかけられる。 「あの……、お隣いいですか?」 「どうぞ。」 他に空いてるところはあるのになと思いながらも、断る理由もなく場所を詰める。 「なぁ、城崎。次どこ行く?」 「そうですね…、ここは?足湯でポカポカしてきたし、ビールもありじゃないですか?」 「え!飲んでいいの?」 「二人きりだからですよ。」 「あのぉ…?」 気にせず城崎と話していると、女の子が話しかけてきた。 「どうかされましたか?」 「今話してるのって、地ビールのお店のことですよね?私たちも行きたいんですけど、場所がわからなくて…。よかったらご一緒してもいいですか?」 「えっ……。」 マップで調べればよくない? そう思ったけど、初対面なのに勇気出して道を聞いてきた人にそんなドライな言い方するのもどうかと思って戸惑う。 城崎の方を見ると、あからさまに嫌そうな顔をしていた。 「マップで調べればよくないですか?」 「えっ…?」 「俺たち今観光中なんですよ。頑張って仕事詰めて取った有休で、久々に二人きりで旅行なんです。一秒すらも惜しいんで、マップ調べて行けないなら別の方に頼んでもらっていいですか?」 「「…………」」 「行こ。先輩。」 「あ、ま…、待って…。」 城崎は足湯から上がってタオルで足を拭き、足袋(たび)に足を通して下駄を履く。 俺も急いで足湯から上がって、城崎に差し出された手を握った。 「ごめんね!君達も観光楽しんでね!」 「先輩、気にかけすぎ。」 「だって、言い方冷たかったろ?」 「そんなことないです。丁寧に理由まで説明しましたけど。」 さっきより歩くペースが速い。 城崎ってば、俺が少し女の子のこと気にかけただけで拗ねなくてもいいのに。 でも立ち去った後、女の子たちの口から「狙ってたのに〜」「次行こ、次!」と聞こえてきたので、城崎の対応が正しかったのかもしれない。 「城崎」 「なんですか。」 「地ビール飲んだら、ホテル戻ろうな。」 「もういいんですか?」 「十分だろ。俺、早く飯食って、城崎と風呂入りてぇ。」 「俺も…。」 「ん。じゃあ決定な。早く地ビール飲もうぜ。」 逆に城崎の前を歩いて、手を引く。 城崎は嬉しそうに俺の後ろをついてきた。

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