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第505話
「先輩、撮った?」
「え……、あ、一枚だけ……」
「じゃあこのシャッターの音なに?」
周りからカシャカシャとシャッター音が聞こえる。
俺じゃない他の人たちが、城崎に向けてシャッターを切っていた。
それを知った城崎はくすくす笑って、「もう満足した?」と俺に近づいてきた。
「わっ…、ま、待って…!」
「何?」
「今心臓ヤバイから…っ!ちょっと待って。無理。どうしよ…。」
城崎の格好良さを改めて実感するたびにこうだ。
心臓が早鐘を打ち、顔が熱くて、多分今近付かれたら…。
カクンっと崩れそうになる俺を、城崎が支えた。
「こ…、腰抜けた…。」
「ぶはっ…!」
「笑うなよ…。」
「可愛すぎ。このままおぶって帰りましょうか?」
「無理…。恥ずかしすぎ……。」
でもさっき城崎が目立ちすぎたから、周りの視線は俺と城崎に集まっている。
この状況をじっと見られているのも恥ずかしくて仕方なかった。
「もうすぐ日没ですよ。駅に戻りましょう?きっと素敵な写真、たくさん撮れますから。」
「うん。」
結局腰の立たない俺は、城崎におぶられて駅まで戻った。
周りの人にくすくす笑われたりしたけど、城崎の背中に顔を隠した。
「なぁ、城崎…。」
「なんですか?」
「………大好き。」
「ふふっ…、今?」
城崎は嬉しそうに笑う。
だって、さっきから好きだって気持ちがどんどん溢れ出してくるんだもん。
「さっきすげー格好良かったよ。何?モデルでもやってたのか?」
「お小遣い稼ぎ程度でやってたこともありますね。本当、雑誌の小さいコーナーとかですけど。」
「見たい。残ってねぇの?」
「俺は残してないですね。」
「どこに聞いたら見れる?」
「いや、本当大学入りたての時とかですし、残ってないですよ。」
「むー……。見たい……。」
俺の知らない城崎を見たい。
モデルなんて絶対格好良いじゃん。
どうやったら手に入るんだろう?
「城崎の友達とかに聞いてみてよ。」
「嫌ですよ。なんて聞くんですか?俺がモデルしてた頃の雑誌とか持ってない?って聞くんですか?」
「ぶっ!ナルシストみたい!」
「でしょ?だから嫌です。」
「恋人が欲しがってるからって言ってよ。」
それならナルシストみたいじゃなくね?
俺ってば、天才かも。
ニコニコしてると、城崎は少し拗ねた声で俺に尋ねた。
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