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第510話

「「おかえりー!!待ってたよ!!!」」 翌日出社すると、とびっきりの笑顔で出迎えられた。 主に城崎が。 「なんなんですか…?気持ち悪い…。」 「こら!城崎!」 「いや、だって。なんかいつもと態度違う…。」 小声でそう言ってくるから、思わず頭を叩く。 気持ち悪いなんて上司に言ったらどうなることか。 社会人として一から鍛え直せ。 「部長、どうしたんですか?」 「いや、それがね!城崎ご指名でO社から打診がきたんだ!」 「O社ってあの?」 「そうだ。向こうから打診が来るなんて、願ったり叶ったりだな!」 O社は以前城崎が契約を結んだ大手会社だ。 前は新作のタイアップ企画で、向こうのブランド力もあり新作はバカ売れした。 こちらとしては是非、またO社とご一緒したいわけだ。 「よかったじゃん、城崎。」 「まぁ…。俺としてはO社には感謝してるんですけどね。」 「………?」 「先輩と付き合えるキッカケになったし。」 「…っ!」 そうだ、たしかにそうだった。 城崎から猛烈アタックされ、O社と契約できたらもう一度2人で飯に行くと…。 まさか二週間で契約を結んでくるなんて…、と驚いたことを今でもよく覚えている。 そっか。じゃあO社には俺個人としても感謝しなければいけないわけだ。 「O社には俺から一報入れてみます。あ、皆さん。お土産どうぞ。先輩と俺からです。」 「「おお〜!!ありがとう〜!!!」」 城崎は持ってきたお土産を机に置いて、仕事用のスマホを持って会議室の方へ行ってしまった。 仕事してる城崎は格好良い。 でも時々、出来すぎて遠く感じることもある。 城崎が行ってしまった方をぼーっと見つめていると、トントンと肩を叩かれた。 「何ぼーっとしてんの?」 「涼真…!」 「旅行デートお疲れ様。また一段となんかエロくなって。」 「えっ?!」 涼真に言われて、びくっと身体を揺らす。 エロくなったって何?! ずっとシてたのバレた?! 焦って自分の身体を確かめていると、ケラケラ笑われた。 「大丈夫、見た目じゃねーよ。俺は付き合い長いから、なんとなく雰囲気が、な?」 「本当…?」 「おう。……あ、そういえば綾人、アレどうすんの?男同士だとやらないのか?」 「アレ…?」 「バカ。もう来週だぞ?バレンタインだよ、バレンタイン。チョコあげんの?」 「あ……。」 忘れてた。 今日は2月7日。 一週間後はバレンタインデーだ。

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