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第518話
prrr………
次の日の朝、アラーム音でもない、電子音に目を覚ます。
どうやら城崎のスマホの着信らしい。
「えぇ。……は?いや、……はい。はい。……明日じゃダメですか?………はい。………わかりました、では今から伺います。…………はい、………はい。では後ほど。」
城崎はスマホを足元に投げてため息をついた。
「どうかした?」
「………呼び出しです。なんかトラブったらしくて。俺いなくてもいいと思うんですけど、先方がどうしてもって…。」
「そっか…。行って来な?」
「やだー…。先輩とイチャイチャしたいぃ……。」
城崎は俺をぎゅうぎゅう抱きしめながら我儘を言った。
もちろんできるなら、俺だって城崎と一緒にいたい。
「仕事だろ?大事な案件じゃん。ちゃんと待ってるから、行って来な。」
「先輩ぃ…」
「飯作って待ってるから。」
頭を撫でながらそう言うと、城崎はこくんと首を縦に振ってベッドから立ち上がった。
おはようのキスも忘れずにして、俺がリビングに着いた頃にはもうスーツに着替えていた。
「ごめんなさい。今日もゆっくり過ごそうって約束したのに…。」
「いいよ。仕方ないじゃん、仕事だし。それだけ城崎が頼られてるってことだろ?俺、誇らしいよ?」
「うぅ……。さっさと終わらせて帰って来ます。」
「うん。待ってる。」
「帰ってきたら先輩の手料理と、お風呂と、あと……」
「うん?」
「…………甘えていいですか?」
上目遣いでそう聞くものだから、男の俺にはないはずの母性が目覚めそうになる。
「いいよ。いっぱい甘やかしてやる。」
「やった♪じゃあ行ってきます、先輩♡」
チュッと行ってきますのキスをして、城崎は家を出た。
寂しいけど、まぁ…。
「チョコ作れるな、これで…。」
今日は2月13日。
来たる2月14日、バレンタインデーに向けて、俺は手作りチョコを作ろうと思ってる。
今日は城崎がいるからどうしようかなーとか、サプライズにはならないけど、一緒にチョコ作ろうかなとか思っていたら、まさかの仕事の呼び出し。
これはサプライズしろってことだよな?
スマホで『彼氏に喜ばれる手作りチョコ』と検索する。
大抵の人はチョコと一緒に何かプレゼントもするらしい。
「わ…。作れるかな……。」
チョコを溶かして固めるだけのものから、ケーキやトリュフ、調べれば色々出てくる。
城崎は甘いものが得意ではないから、チョコ以外でもいいと思うんだけど…。
でも俺はバレンタインデーに好きな子からチョコ貰えたらすげぇ嬉しかったし…。
城崎はもしかしたらチョコじゃない方が喜ぶかもだけど…。でも……。
「あ。これなら……。」
よさそうなレシピを見つけて、俺はその材料と、一緒に渡すプレゼントを買いに、近くの百貨店へ足を運んだ。
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