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第519話

百貨店に着き、まずはプレゼント選びだ。 買うものはさっきなんとなく決めた。 たくさんあっても困らないもの。 「いらっしゃいませ。今日はどういったものをお探しですか?」 入ったのは百貨店の紳士服売り場。 その中でも所謂ハイブランドと呼ばれるお店。 「普段使いできる落ち着いた柄を探してるんですが…。」 「承知しました。こちらにございます、どうぞ。」 さすが高級店だけあって対応が丁寧だ。 俺と同年代くらいか、少し歳上くらいの男性店員について行く。 案内されたところには、城崎にぴったりのネクタイが並んでいた。 「こちらが人気ですよ。本日再入荷したばかりで、前回も入荷してすぐに売り切れてしまったんです。」 「すごくいいデザインですね。ちなみに20代に人気なデザインとかってありますか?」 「贈り物なんですね。こちらなんかは若い方にも人気で……」 店員さんのおすすめを聞きながら、城崎のスーツ姿を想像して照らし合わせてみる。 格好良いから何でも似合うんだよな。 城崎がよく付けてそうなのは店員さんにオススメされたこれなんだけど、こっちのデザインの方が俺は好きかも。 「これとか…、どうですかね?」 「とても素敵だと思います。」 「じゃあ、これにします。」 「かしこまりました。お包みしますので、少々お待ちください。」 爽やかな笑顔で店員さんはネクタイを包みに裏へ消えた。 はぁ…。このネクタイ付けた城崎、早く見たい。 絶対格好良いもん…。 想像してうっとりしていると、さっきの店員さんが戻ってきた。 「お待たせしました。メッセージカードもお付けしていますので、よかったらお使いください。」 「はい。ありがとうございました。」 会計を済ませ、店から出る。 そのあとはスーパーに寄って材料を買い、早足で家に帰った。 作ろうとしているのはビターチョコと洋酒を使ったチョコムース。 キッチンに材料を出して、レシピを開き、手を止める。 「ガナッシュってなんだ…?」 本ではなくネットで調べた作り方なので、簡潔に書かれすぎてお菓子作り初心者の俺には難しかった。 涼真に電話をかけると、しばらくコールが鳴った後出てくれた。 『どうした?』 「なぁ、涼真。ガナッシュって何?」 『知らねーよ。てか、作ってるかつ、俺に聞いてくるってことは、城崎いねぇの?』 「うん。仕事で朝から呼び出し食らって出ていっちゃった。」 『そっか。まぁサプライズできて良かったんじゃん?』 そう。寂しいは寂しいけど、サプライズできるのは嬉しい気もする。 城崎からバレンタインって単語、微塵も出てこなかったし。 もしかして忘れてるんじゃないかなーって思ったり。 「うん。で、ガナッシュって何?」 『だから知らねーって!調べろよ!』 「たしかに。じゃあまた明日。」 『そんだけ?!まぁいいや、頑張れよ。』 通話を切って、スマホでガナッシュを調べてから、チョコ作りにチャレンジした。

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