523 / 1069

第523話

その後も女性社員からの城崎の呼び出しは絶えなかった。 昼休みなんて、城崎が飲み物を買ってくると部署から出た途端に囲まれていた。 「恋人がモテるってのも大変だな。」 「涼真…」 振り返ると、涼真が苦笑しながら城崎の方を見ていた。 城崎が解放される様子はないし、今日の昼休みは涼真と食うか…。 空いてる小さな会議室に二人で入り、俺は弁当を開ける。 隣で涼真も弁当を開けたのを見て、俺は手を止めた。 「え。何?恋人できた?」 「…………、そういえばチョコあげた?」 「はぐらかすなよ。俺のことはいいんだよ!え、涼真彼女できたのか?!」 「……うん。実はさ…」 涼真は照れ臭そうに話し始めた。 何やら、誕生日に城崎があげた婚活パーティーの招待状、それが功を成したらしい。 あんまりノリ気でもないまま参加した婚活パーティー、めちゃくちゃ好みの女性がいてアタックしたそうだ。 「4つ年上なんだ。煙草吸ってて、婚活パーティーなんか興味ないって顔しててさ…。それがすげー気になって、声かけたら目があって、もうヤバくて…」 「年上なんだ?ヤバいって何が?」 「いや、もうとにかく好みでさ、めちゃくちゃ美人で、身長は俺と同じくらいなんだけど。見て。」 涼真は一緒に撮った写真を見せてきた。 顔小さいし、細くてとにかく脚が長い。 ストレートロングの黒髪がよく似合っていて、まるで人形みたいだ。 「やば…。スタイル良すぎて、涼真の足短く見えるじゃん。」 「だろ?!すげー細いの!心配になるくらい。」 「いつから付き合ってんの?」 「えっと、婚活パーティーに行ったのが9月で、そこから何回か食事に誘って、付き合えたのが12月。クリスマスの日に告白した。」 「へぇ〜!よかったなぁ、涼真。」 嬉しそうに話す親友を見て、俺も嬉しくなる。 付き合ってからまだ数回しか会えてないらしいが、昨日彼女が涼真の家に泊まって、朝早くからお弁当を作ってくれたらしい。 「これ初めて弁当作ったらしい。料理は普段あんまりしないんだって。でもこのクオリティ、すごくない?」 「めちゃくちゃ器用だな…。」 「だろ〜?女子力高すぎ。たしか医療事務してるって言ってたかな?こんな綺麗な人いたら絶対声かけちゃうよ、俺だったら。」 涼真の惚気話を聞くのはなんだか新鮮だ。 話を聞いてたら、涼真は嬉しくなったのか、鞄の中から綺麗に包まれた箱を取り出した。 「じゃーん!今朝彼女にチョコもらっちゃった!」 「おぉ。よかったじゃん。」 「めちゃくちゃ高いチョコなんだよ。俺なんかのために無理しなくていいのにさぁ…。手作りではないんだけど、すげー嬉しい。綾人、絶対にチョコ渡せよ?」 「わかってるよ…。てか、涼真、こんなに饒舌に話してるけど、今までよく俺に黙ってたな。」 「だってなんか照れ臭くってさ。一回話しちゃえば、もう際限なく惚気ちゃうなー。俺の彼女可愛すぎるから仕方なくない?」 「めちゃくちゃ惚気るじゃん。」 「しかも、綾人と二人で話してたら城崎に睨まれるし?」 「それはそう。」 その後も延々と惚気話を聞き、いつのまにか昼休みは終わっていた。

ともだちにシェアしよう!