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第525話
城崎は綺麗に完食し、俺を抱きしめた。
「先輩、美味しかったです。ありがとうございました。」
「ん。喜んでくれてよかった。」
「喜ばないわけないですっ!」
チュッとキスをされると、ビターチョコの苦味と洋酒の香りが広がる。
俺はやっぱりミルクチョコが好きだな…。
甘いのが嫌いなんて、城崎ってば人生損してるよなぁ。
「あ。そういえば…」
「ん?」
「まだあるんだよ。プレゼント。」
顔が離れた時に城崎のネクタイが目について思い出す。
部屋に取りに行き、城崎に手渡す。
「こんな俺のこと、好きでいてくれてありがとう。」
「先輩…っ!ずっとずっと、死ぬまで大好きです!!」
「俺も。」
帰ってからいっぱい抱きしめられて、キスされて、すげー幸せ。
初めてバレンタインをあげる側になって、プレゼントとかチョコ作りとか悩むこともあったけど、でもこんなに喜んでくれるなら俺も幸せだ。
「城崎、これネクタイなんだけど、着けてみて?」
「はい。先輩が結んでください♡」
「わかった。」
城崎が身につけているネクタイを解き、プレゼントしたネクタイを結ぶ。
あー、やば。
「すげぇ似合ってる。」
「先輩が選んでくれたんですか?」
「うん。思った通り、格好良いな。」
「嬉しい。ありがとうございます…」
うっとり見つめていると、城崎にまた抱きしめられる。
あー…、無理だ。
幸せすぎて、このまま時間が止まればいいのにと思う。
「先輩のこと離したくなくて、ご飯作れないや。」
「俺も、しばらくこのままがいい…。」
「あー……、かわいい………。」
抱きしめてキスしてを繰り返し、あっという間に時計の長針は一周回り、お互いの腹の虫が鳴る。
名残惜しくも体を離し、城崎はキッチンへ、そして俺は風呂場へ向かった。
お風呂の後はこたつで城崎の作ってくれた鍋をつついた。
「美味い。」
「そう?よかったです。」
「やっぱり冬といえば鍋だよなぁ。」
「好きな人と一緒に暮らして、のんびり鍋つつけるなんて夢みたい。幸せ者です、俺は。」
「そんなの俺もだよ。」
幸せを噛み締めながら、またキスする。
離れた唇は俺の耳元へ移動し、耳朶を甘く噛んだ。
「先輩、我儘言っていい?」
「んっ…、何…?」
「鍋終わったら、したいことあるんです。」
「わかった…」
了承すると、城崎は満足そうに俺から顔を離し、再び鍋をつつき始めた。
何をしたいのかは分からないけど、好きな人の我儘くらいいくらでも聞いてやるつもりだ。
手を合わせてご馳走様した後、城崎は鍋を洗いにキッチンへ行ってしまった。
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