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第530話

仕事終わって家に帰る。 真っ直ぐリビングに向かうと、テーブルに手紙とプレゼントが置いてあった。 『先輩へ。バレンタインのお礼です。先輩の好きな甘いチョコレート、種類が豊富だったので色々買ってみました。また好きな味を教えてください。それと、先輩が前に雑誌で見ていたスニーカー、是非今度のデートに使ってください。』 そっか。今日はホワイトデーなんだ。 箱を開けると、惑星の形をしたチョコレートが並んでいた。 食べるのが勿体無いくらい綺麗で、とりあえず写真を撮ってみる。 「んま……。」 水星と説明書きがあるチョコを摘んで口に入れる。 マンゴーのような、でも爽やかな香りもして、すごく美味しい。 せっかくだから一日一粒にしておこうと、残りは冷蔵庫にしまった。 もう一つ足元に置いてある箱を開ける。 中に入っていたのは、つい最近雑誌で見て、抽選で外した限定のスニーカーだった。 たしかに欲しいと言っていたし、城崎に「どれ?」と聞かれて見せた気もする。 どうやって手に入れたんだろう?という疑問より、欲しかったものを覚えていてくれた感動が大きかった。 嬉しくて、城崎に電話をかける。 仕事中のはずなのに、城崎はワンコールで電話に出てくれた。 『もしもし。』 「あ、城崎…!ごめん、仕事中に…。どうしてもお礼言いたくて…っ」 『いいですよ。少し休憩もらいます。』 城崎は電話先で少し抜けますと誰かに伝えて、また俺に話しかけた。 『お待たせしました。10分だけ休憩もらえました。』 「急にごめんな。ありがとう。」 『先輩から電話きたの、すげー嬉しいです。元気出ました。』 城崎の優しい声。 すげー落ち着く…。 「いつ置いたの?俺の方が後に出たろ?」 『昼休みにダッシュで家帰ったんです。どうしても今日渡したかったんですけど、遅くなりそうだったので…。』 「そっか。ありがとな。チョコ、一粒だけ食べたんだけど、めちゃくちゃ美味しい。食べるの勿体無いくらい綺麗だし!」 『よかった。見た目は綺麗だけど、味はどうなのかなって不安だったんです。無難かもしれないですけど、人気のお店だし外れないかなって。』 「美味しかったよ、ありがとう。それに、スニーカーもマジで嬉しい…。覚えててくれたのか?」 『当たり前じゃないですか。先輩、抽選外れてすごく残念そうにしてたから。サイズ大丈夫だと思うんですけど、履いてみました?』 「まだ履いてないよ。ちょっと待ってな…、お。すごい!ぴったり!」 『よかったです。先輩きっと似合うから、デートがもっと楽しみになりました。』 「うん!じゃあこのスニーカーに合わせた服装考えないとな〜。」 『楽しみにしてますね。』 そのあと一言二言だけ話して、通話を切った。 昇進の話は直接言いたいから、今は内緒。 早く伝えたいな…。 城崎はきっと俺なんかよりもずっと出世が早いから、今のうちに年上らしく格好つけておかないと。 まぁ、城崎はどんな立場になっても、俺のこと格好良いって言ってくれるんだろうけど。 新年度用に会社からもらった新しい名刺を見て、そんなことを考えていた。

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